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ここは三話。これが街かー

「ふぁあ……っゅ!」


 朝日差しが眩しくて目が覚めるが、伸びをしようとして派手な音を出して木に頭をぶつけた。


 昨日寝落ちてしまったので自分が狭い木の洞にいるとは思わなかったのだ。


「いったーい。……どこ、ここ」


 手の中には鹿の角。周りを見れば騒いでいた動物は消え、数十歩進めば森の外へ出られるだろう位置に自分がいることを知る。そのことに寂しさを覚えるが直接別れをしなくてよかった、とも思った。

 なぜなら別れの感情に耐え切れず、駄々を捏ねてしまうだろうことは想像に難くない。別れの感情とはめんどうくさく、感じなければ悲しくなることもないのだ。

 アイラは少しの間目を閉じ、彼らを思い浮かべる。


(この森でよかった、と確信する。この世界でよかった、そう思えるようになろう)


 木の洞から慎重に罠を避けながら降りた先で、狭くて入れづらかった鹿の角を袋に入れ慎重に歩き出す。

 理性無き獣の気配がそこかしこにあるが、静かに避けるような動きでゆっくり森を出た。そこには草原があり、森を抜けてしまった事をひしひしと感じる。

 遠くには川と、丘の上に立つ色とりどりの建物群にそれを覆うドーム状の膜らしきものが掛かっていて、人の集団がそこで生活しているのだろう。

 草原に降り注ぐ光は温かく昼寝日和だ。アイラはその場で瞼を降ろして眠りにつきたくなるが、眠りから覚めたばかりなので我慢して歩みを進めた。

 ウサギが居てそれを狙う鳥も空に飛んでおり、狼っぽい犬らしきものもちらほら見えた。その他非捕食者はそれなりにいるようだ。魔獣は居たり、居なかったりで動物からは避けられている。

 草は動物が悠々と隠れたりできる高さでアイラには少し歩きづらい。時間がもったいないので灰霧を周辺空気からゆっくり取り込みながら草を分けるように進む。それは魔獣との戦いで知った仕事の一つである浄化だ。

 半分くらいコレのために生まれている、と言っても過言ではないらしい。理由をこれから探すのだが。


 たまに小さな魔獣がアイラに襲ってくるが灰霧で物を生成し跡形もなく散らした。そして自分に合う武器はなんじゃらほい、と記憶を試す中には途轍もなく重い物などがあり筋力強化は急務だと感じる。

 それにきっとまだ物質生成以外にもできることはあるだろう。ついでにおそらく滑空ができるなら空を飛ぶことだって……と妄想を膨らませ口角が上がるのを感じた。

 少ない楽しみを膨らませ歩く。眠気を誘う日差しに負けないよう。


 実は一定の魔力が渦巻いている場所に入ると情報を抜き取れるようなのだが、しかしそういう場所は昨日のような魔獣もセットであろうことが容易に想像できた。アイラは再び戦うことを想像し複雑な気持ちになるが己の為だと割り切ることにする。


 大抵の街にあるとかいう登録も自由らしい討伐者協会という施設で、魔力渦の場所を聞くためにそこへ行ってみよう、とも考えている。詳しい内容を聞いてからでも遅くはないしゆっくり決める予定だ。入った方が便利そうなのでおそらく確定だが。

 あれこれ考えながら歩いていると街道を見つけた。街道は軽く整備されていて人もまばらだが通っているのでこれから向かう町はそれなりに活発なようだ、と認識できて胸が高鳴る。

 草の間から見える人々は何か不思議な表情をしている。というか草をかき分けたみたいに道があることに驚く。


(人だ。人だよ!)


 昨日魔獣と戦った時に得た情報には人がどういう存在か、というのも少しだけ知れたが、こんな種族だとは思わなかった。

 向こうの視線を理解しようとしてみれば、服装と髪で奇異の視線で見る人、顔を熱い視線で見つめてくる人。かと思えば納得した表情の後に疑問の表情に代わっていく様子だ。なんなのか、人間とは。


(なんだこの生き物。めんどくさそう)


 そんな自分も他人からするとめんどくさいのかな、と頭に過るが気にしないでおく。

 どうにか顔が原因の半分らしいのは察したのでうつむき気味に街へ行くことにすると、少しだけ視線が減った。


 ちょっとだけ気になるので横目で人を確認しながら歩くと、剣を持つ人、杖を腰に下げている人。何かに乗り足を動かして早く進む人もいる。どうやら乗り物に乗っている人は道に引かれた線で歩行者と別れているようだ。

 ごくたまに浮いてる人もいて不思議に思い少しだけ心が湧く。ワクワクは止まらない。


 人間観察し、またされながも街道を歩くとやがて大きな膜――結界というらしい――の前に着いた。この結界で覆われている場所が人の住む場所の証であり、先ほど見た街だ。


 街の出入りは結界を通し神使と人間で統括されるので自由なことは最初に知識として貰っていた。犯罪の摘発も科学と魔法で証明されるのであまり気にしなくていい。もともと窃盗などの犯罪率は低く、考えられるのはテロや暴力関係だ、とアイラの知識にはある。


 なので基本的には色々な町は出入り自由だ。自由なのだが、初めてなので躊躇してしまい足先で結界をつつく。結界に波紋が広がったり、何か弾ける音が鳴ったりして怖くなってしまう。


 アイラは音に驚きつつと意を決してそーっと入ると、己が何かに包まれた感覚がして手元には一枚の子冊子。

 この街の案内図のようだ。円形の中央に神士庁舎、その周辺に重要な施設が置かれ商店街はばらけて置かれている。

 重要な施設がそろっている中央付近にとりあえず向かうこととし、人がそれなりにいる街へ歩みを進めた。

 

 街中を歩けば建物は一定の距離が保たれ、窓を見れば建物の高さは4階までしかないようだ。街の中では見なかった魔動車、と呼ばれるものなどが多くみられ、危うく車道に入りかけて冷や汗をかく。

 結界や建物の間隔、高さを制限することで街の中で魔力が偏らないように作られているようだ。しかし風景は科学様式の建物、原始様式の建物など色とりどりで見た目も違うので、期待で胸が膨らむアイラの目を楽しませた。


(とりあえず討伐者協会に行こう)


 討伐者協会は赤い屋根に渦と剣を立てるシンボルが掲げられていて、協会のある中央には時計が設置されてる。どうやら時間は十四時くらいだ。

 アイラは単位などはもろもろ思い出しているので暮らすこと自体に不安はないのだが、ただ時計の存在を見てから思い出した。時計が無いと不便だよな、と思いそしてとある事実に気がつく。


(あれ、時計を買わずとも作ればいいのでは?)


 アイラは銀色の時計をそっと生成させた灰霧で生成する。銀時計は灰霧の使用量が多い上なぜか再利用できなくなってしまったが、設置されている時計と見合わせれば遜色なく動いているようだ。


 そこはかとなく嬉しさがこみ上げてくるので、その勢いでめんどくさそうな気配が漂う討伐者協会に突撃する、が。

 扉が閉まっているのに聞こえる賑やかな声と、時折叫び声なども扉を超えて聞こえてきて来るのでげんなりしてしまう。

 扉に入っていくのも様々な人たちで、たまに人なのかわからないような容姿の者もいた。

 え、ここに入ってくの? とアイラの気持ちはこの街に来てから一番戸惑っている。


 そっと扉を押して入ればあらゆる視線がこちらに向き、すぐに離れていく。中には心配そうな眉根の表情もあった、理由は知らないし視線に驚いていてそれどころではなかった。


 ロビーの左奥が総合受付なので、そこに行くまでに視線をあつめないように移動していると食事場の方から話が聞こえる。どうやらアイラからは注目が離れたようで雑談を始めたようだ。内容が気になるので耳を澄ましてみる。

 

 曰く討伐者協会で流行っているのは自伝を書くことらしい。

 自伝を書けばある程度お金になる、名声が出れば力にもなる。内容を盛っても小説として売れ、そして身辺整理にも役に立つ。他にも利点は色々あるようだ。

 興味は出るものの、今することでは無い。しかし書いてみるというのも、と静かに考えていると総合受付から声がかかる。


「ねぇ! そこのあなた、受付に来ないの?」


「あ、今行きます」


 アイラは頭を軽く振って切り替え受付に行く。そこでは人が一人、気だるそうに立っている。名札を見るとソレアと書かれていて、少しきつい目に亜麻色の髪をした美女だった。


「こんにちは。ソレアです。ここはあんまり使われないから用事が来るときは位置的にも直ぐわかるのよ。必要な時は必要なのにね」


 そうソレアが苦く笑っていうのでここが暇なのだと察してしまう。


「まぁ、他のみんなが集まって様子があるのは食事場と受け取りくらいですしね」


「そうそう、貴方みたいなミャルナントさんも少ないしね」


「ミャルナントさん?」


 アイラが詳しく聞いてみれば、理由があって旅神が信徒などをこの世界に連れてきたはいいけど、色々複雑な事情で神様が面倒みれなくなった人たちのことだそうだ。

 とはいえ大抵はある程度知識を与えて現地では放置なので、結局はここでお世話になるのだが。

 そんなごちゃ混ぜな状況なので呼び方が混ざり、単によその世界の生き物も引っ括めて『ミャルナント』と呼ばれることが多いのだそう。


 ミャルナントの共通点は奇抜な服装などをしていて、本人に自覚がないこともしばしばで、そういう時はひっそりと神が因果で誘うので問題ないとか。

 ちなみにミャルナントの語源とはよく迷子になる子猫が登場する物語の事らしく、そこからとっているとの事。

 アイラはそのミャルナントではないような気がするがその体で行くことにした。手っ取り早く自分を証明できる方法だ。

 そう意気込んでいると水を差すようなソレアの一言が。


「手続きの前に、ここの二階にある部屋で講習を受けてってね。お金は後日討伐金受け取りの時に天引きされるわ」


「え。講習あるんですか?」


「当然あるわよ。もし時間が掛かっても大丈夫。宿泊もできるし学ぶ気があればいつまでも受けられるわ。それに基本的な知識だけだから、知っていたら飛ばせるから」


 さも当然という様にソレアは言い放ったので、そういうものかと納得した。


 一応ミャルナント側に勉強や知能方面に何かのマイナス要素があれば考慮され、信仰する神を無理やり探して何とかするらしい。連絡のつく状態でなければ討伐者に随行依頼が行くとか、行かないとか。そんな小ネタも教えてもらえた。

ありがとうございました。

下の星、欲しいな。


はい。こういう形で進めました。自分の世界と睨めっこして書いてます。

あとですね。一人称の書き方があと牽いてますね。三人称で書いていいものを書いてない。拙くて申し訳ない。次回から修正していきます。


アイラの一言

「正直勉強面倒臭い」

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