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ここは十五話。猛烈な走りとスミェーラトの活用。


 手早く支度を終えて、早く戻るために街中を走る。風がひんやりと身体を包むようですこしこそばゆい。

 走っていれば会話も生まれず暇なので、あれこれ考えているといい方法を思いつく。


「あ、ねぇムエナ。地図開いて近道できないか探す?」


「……そうですね。危ないので歩きながら見てみましょうか。紙の地図は行きにあまり使いませんでしたし、期待しましょう」


 お互いにスミェーラトを開き、丸の形をした地図リヌカをタップした。一応前方確認にスミェーラトをすこし遠目にみて、体の前へ持ってくる。

 地図自体は初めて見るが、魔力渦以外の分布はしっかり書かれているようだ。今は再生の魔力が強く、緑地及び草原に分類されている。分布解析図をみると地形変質は大分先のようで安心だ。

 ちなみに地形変質の際、動物の類は動物類系神話の皆様が多大な、多大な力を注いで保護に力を入れている。

 彼等からすると知能のある無しは若干二の次らしい。実は保護組合には自世界の運営に疲れ果てた神もいるとの噂もある。動物は可愛いので正直同感するところだ。


「こうなると来た道で帰るのが良さそうですね。あ、渦寄りますか?」


「うーん……大丈夫かな。実は小瓶作ったりみたいなのも渦に行くといいんだけど、そっちも行きながらでとりあえず大丈夫」


 さらっと信頼の証にもう一つ情報を話したがムエナは反応せず「では行きましょうか」と言い、先に走りだした。

 ミェナが飛んで行く様子を見て思い出したのだがミェナの機能には乗せた物を適切な大きさにする、というのがあるらしい。食べられるもの限定だが……。

 つまり、ムエナを乗せたミェナがすごいスピードで街まで飛び、魔獣を戦う時の速度をアイラが維持し続け走り続けるのだ。……やりたいだけである。

 食材扱いは申し訳ないが、向こうについて宿取るのはムエナである。あとスミェーラトの基金申請も使わなかったので一応謝らないといけない。ムエナの体力と速度はあるような無いような、多分制約が掛かっていて万全ではないのである。

 色々理由付けたが、走りたいのだ。演習場で体を動かすのが楽しかったので極端な人工魔力の少ない外で、沢山走ってみたい。


「ねームエナー! ミェナに乗ってムエナを軽くできる?」


「え、多分できますけど……。何するんですか……?」


「いいから、乗ってみて。私追いつくから!」


「……大丈夫ですか? アイラさんの事でしょうから、言わないんでしょうけど……」


 考えながら走っているので、心配になるがムエナが急に「あ」と一言発して質問を投げてきた。


「アイラさん、演習場での件楽しかったって言ってましたよね。眠るのもなんでしょうけど、体動かすの好きなんですか?」


 残念ながらというべきか、全くもってその通りである。気づいてしまったのだ、体を沢山動かして楽しい状態で眠るのはとても気分がいい。そのことを伝えると流石に呆れた顔をしてミェナを投げて来た。曰く心配は掛けないでね、とミェナに乗り込んだ。

 適切な大きさなので、直径三十フェントのミェナの上に乗るとそれなりに小さい。料理に欲しい機能が沢山あるとのことでその機能の一つだが、小さいムエナも可愛いのである。ミェナに筋肉の山を持つ人載せたらよさそうだ。

 言っておきながらだが普通に生きたままとか人を乗せるのはどうなんだとは思わないのか普通にムエナは気にせず乗り込んでいく。ミェナは整備や掃除等いらない。汚れる心配はないのだろう。お昼にやった整備はミェナの趣味だとかで、やってもいいそうだ。犬を洗う感じ、とのこと。

 飛び出し防止の祝詞を唱えた様子のムエナは体で丸を作り徐々に速度を上げていく。

 それに合わせアイラも準備を始めていくが、その内容は試運転の破壊ある可能性付与と突拍子もないことだ。灰霧から物を生み出すのであれば反対の黒である破壊の技術も行使できるのでは、と思いつきはしたんだ。使いどころ無かったけど。

 でも、あの演習場で言っていた技術神の言葉を意訳するなら可能性の消失を成すことはできるだろう。

 であるならば、自己内に宣言すれば能力の向上もいけるのでは?

 ってことで、ドーン!


「我が存在は導となりて、足が縺れ失敗すること、最大速度が己で決まるその可能性は一時的に破滅の時がくる。宣言するよ、私は誰よりも早い!」


 既に遠くを飛んでいた二人を徐々に加速する足で少しずつ追い越していく。先は遠く、この速度では足りないので、突風が吹き荒れるようにまだ視界に映る草原を、視界で捉えきれなくなるまで掛けていく。確か距離はあの時、休憩時以外は聖獣の恩恵なのかユラちゃんは時速百ファルカ(ほぼキロメートル)と聞いていて、かかった時間は休憩とか含め十三時間と三十分だ……。

 遠い、遠くない? ユラちゃんよく走れたな、と思いとっとと走らないと先行くムエナに間に合わないので速度を上げる。

 必死に風になるように足を動かすも二人についていけない。縺れないのだから必死に走るも、もう位置情報でしかムエナをとらえられない。速度体格差で何言っても聞こえないし、こちらも声が出せない。

 しかたないので、さらに速度を上げる。走れ、走る。走らせろ、そう願い片道一千三百ファルカを駆けていく。

 もう星になれ、と思った瞬間視界が魔力の色に染まる。速度を出し過ぎて魔力しか視界に入らなくなったのか、そうなのか。


 ◇


 無心で走り、何時間が経っただろうか。止めることもできなければ、正直この運動は楽しくないと気が付き、思慮が足らなかったのを反省する。多分性格なので辞められない。

 そしてもう何が起きたのかわからず、考えるのをやめた。というか、走りながら寝た。

 気が付けば鼠色の壁にぶつかり空は中天頃である。

 体力を超え、寝て走り壁にぶつかる事はそう事例がないだろう、しかしその状況で何が起こるかと言えば……。


 簡潔に述べるのであれば、大勢のが居るところで盛大に三色の魔力を吐いた。何故か大量に、魔獣が出るのではないかと心配になるほど。

 どうしてかこんなよくわからない物を吐けるからなのか、なぜか周囲は避けていく。アイラの周辺には慌てている様子の人ではない存在達。

 周りが痛い所ないかと必死に叫ぶので、小さく息を吸い言葉をひねりだす。


「ぐ、ぬ。わきばらいたい……」


 あまりの苦痛に思わずそう呟けば名も知らぬ旅装をした存在が介抱してくれた。ムエナも傍らにいて周囲の沈静化を手伝ってくれたようである。

 少し落ち着いてくれば衆人環視は解かれていき、安堵と苦痛で安息の地面が渦巻いて見えるようだ。

 ……周囲に頭が上がらないし立てないので蹲っていると、声を掛けてくれる存在がいのである。


「……久遠の君だからこそ神と人はつい許してしまう。それでも自殺を止めることは出来ないし、正直に言うと本当は法律で捌くことも出来ない。だからこそ自分を殺すような無茶なことは、辞めてください」


「あい……」


 次いでムエナからも「声が届かないのはヒヤヒヤしたので、吐くほど走るのはやめてください」と言われたのだ。

 うごごご。寝たのが悪かったか……。

 というか止まって連絡すればいいことに気がつき、愕然とする。


 街の出入口付近で蹲って待っていれば、ムエナが気絶者用の自動車椅子を借りてきてくれたので、そこに恐る恐る座り感謝を述べる。


「うーん……ま、まぁ許可を出したのは私ですし、あの速度だと声も届かないのは知りませんでしたし。私はスミェーラトがしっかり動いてるのを確認できたので……。それより、どうして走りながら寝られたんですか?」


「なんか、出来た……」


 なんかってなんですか、と苦笑して言うが何故かできたのだ。恐らくあれは機人以外の無機類種のような体の働きのはずで人間には到底むり、と言おうともしたが今現在人間では無い疑惑わんさかなので何も言えない。

 そういえばタートウナと連絡先交換しなければ荷車が届かないところだったので良い働きだった、と顔を緩めながら言ったところをミェナに叩かれた。ムエナも「それどころでは無いので安静にしてください。魔力を吐くってなんなのですか……」と言われてしまった。

 仕方ないので運んでもらいながらカシトカサーシャと呼ばれるリヌカを使えるようにするリヌカで暇つぶしを探す。人工魔力酔いのせいでバス等は乗れないのでこのシュカナ森町をゆっくり歩くしかないのだ。

 ムエナに構ってもらいつつ、リヌカを探すと「広々世界な物語等投稿サイト、ノールベルリア! あなたも人生を綴って力を得ませんか?」と書かれたリヌカを見つける。スミェーラトに機能を追加し読書すると、いろいろ存在しているようだ。本の体を取るべく誇張されたものも多かったが、誇張なしで頑張っている作者も多かった。

 ほかにはゲームであったり投機のリヌカもあったりして多様だなぁ、と。目覚まし時計のリヌカでは最大百年に設定できる辺りが特にそう感じる。

 そんなことをしていると討伐者協会に着くも、自動車椅子で入っていくのは邪魔だろう。遠慮などで抵抗もあるが、しかしそうするしかないほどなぜか疲弊していのだ。

 とりあえずアイラは換金、ムエナにすこし聞いてほしいことを伝え、宿の確認と基金の確認に総合受付へと二手に分かれて出ていく。換金の際対応してくれた職員は気さくな感じで関わりやすいのが印象的だ。

 

「現在七千コクハですね……。忠告しておきますがお布施は払っておいた方がいいですよ、めんどくさいなら十二柱の末子であられる始子世界の祖様とか、魔道の祖、知識と記録を司る神、技術神様とかが当たり障りないです」


 別にお布施にマイナス等が無いのは講習で理解している。旅神以上の世界や街を運営している神にお布施を払うことで公共料金の割安、神によっては老化遅延もあったりしてゆっくり吟味するのが常だ。

 しかしお布施しないで起きるメリットもあまりないのが現実で、大抵は縁で信仰してる神ならその神が収支報告すれば税金を納めた扱いになるので難しいところだ。


「あー。だよね……。信仰に対する利益に迷ってあんまり決めきれてないんです」


「そういう方は多いんですよね……いえ、これ以上は個人の問題ですか。そういえば大二柱様は公平の為にお布施はできませんが、宗教団体である白黒組合が一応お二人に代わり税金扱いの集金をしていたはずなので、公共料金の割引等でいいのであれば使えるハズです。公平の為に利用意味は低いですけどそのかわり安くて済む、と界隈では有名ですよ」


「税金は払う義務もないともいえるので難しい問題でね……まぁ、助言ありがとう」


 まるで採用しないように言っているが公共料金が割引であればこの車椅子やバス、神使タクシーに乗り放題となる利点もあるにはあるなとか、あれこれ考えているとムエナがのんびり歩いて来たので、とりあえずこの件は仕舞っておいて後日考えるようにしよう。


「アイラさーん。今は討伐者協会の部屋は空いていないそうです。なんでも技術神が急に祈願祭の開催宣言をしたので奉納物を集めるために集団で予約されてしまったとか……」


「あ、そうなんだ。うーん……森行ってみる? ちょっと危険かもしれないけど何とかなるかもしれないし」


「アイラさんが言うのでその辺も聞いてきましたー。森の奥地は聖獣が多く住んでいて危害を加えることが多いだけなので、本来は自己申告でいいそうですよ。最近は聖獣も活発で森の魔獣も減っていて申告票を至人板で発行し、ポストに入れといてくださいですって」


 その後も色々聞いて基金に関してはココロコに振り込んでおくとの事で、特に何も無かった。

 互いに方針を相談しあい、森に行くことが決まる。一応タートウナに連絡をして色々と買って、森まではそこまで遠くないので歩きで向かう。

 祈願祭は十二柱運営のリヌカ「カヌバレルナ」を通して一覧が見られるので、そこを確認すると確かにアイラが戦い気絶してる合間に発表されているようだ。

 開催時期自体は唐突すぎて未定との事なので、気軽に森に泊まろうとムエナと話し合いながら楽しく向かった。

ちかれた! 事業半凍結!

小説頑張る!


アイラの一言。

「おえ。わき腹痛い」

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