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ここは九話。出発と別れは無し。 あとがきに少し大事なお知らせ。


 ついソレアとの会話が弾み大いに技術というものを語られたが、聞けた内容は千金に値するものだった。きっと技術派の信徒は皆して()()なのだと理解できる早口な語りは、きっとこの先向かう町では日常なのだろう。

 早口で会話をし続ける人たちを少しだけ想像してげんなりした。

 大体はその事が大変無知な人に知らないことを教えるのを是とし、努力して学ぶ者に答えを与えるのを悪とする派閥、というのは講習時の宗教概要で本当にざっくりだが理解している。

 というかあのソレアを見て居れば実際に理解した話だ。


「とりあえず、スミェーラト? を買うまでに時間が伸びたから、貯金を考えなければそんな困ってないね。二人とも餓死しないし、最悪ご飯はなくていいもんね」


「ぁ、あはは。ご飯は食べなくていいから食べないでいいのではなく、余裕がある時代においてご飯とは楽しく、正しく生きるためにするものなのですよ」


 アイラはその言葉に感じる部分があり、その言葉も当然だと理解する。しかし、ご飯を食べるのは少しだけめんどくさい。それも大きな事実だが、ムエナのご飯はおいしいので一応同意しておいた。


「そういわれると、そんな気もする。どこの世界でも何かしらに余裕が無ければそりゃ楽しむご飯は二の次だよね」


「ええ、なので一食だけでも楽しく食べましょう? 例えそれ一つで済むご飯でも楽しく食べられるなら、それは心を癒し、育むものです。もちろん押し付ける気もないし、そもそもご飯が食べれない人が居るのも事実ですが」


「わかった。ムエナのご飯はおいしいし、食べるのはいい。けど、全力を出しすぎな部分もあるから、ムエナの臨時給料? を使い過ぎないように、一応一日一食にしようよ。着くまでに時間かかったら嫌だ」


 早く遊びに行きたがる子供のように言ってしまい、そこはかとなく恥ずかしく思っていると、ムエナからクスクスと笑われながら一日一食で許された。。早めに便利な器具は手に入れておいた方がいい、との考えもあるので我慢が出来ない子供ではない、と言い張るつもりだ。


「そうですね。一食は食べるというのであれば何も言いません。献立は任せてください。あ、全力は出さないようにしますよ」


「やった、ありがとう。あと多分だけど私が大量に使ったお金さ、最初から持ってたのと出会ったとき魔獣の大量発生で稼いだ奴っぽいんだよね。それもあの時間だけじゃたかが知れてるはず」


 アイラは金銭的な執着が未だない。お金が無くて困ることなど自分にはあまりないと思っているので万が一を考えないのだ。

 顔を強張らせているムエナに入出金明細を見せるようお願いされたので、アイラは謎に思いつつも了承する。みるみる内に顔色が変わる様子を見てアイラは怒られるのかと思い、寝台で伏せるように転がった。


 片目で薄くムエナを見れば、肩を震わせ悲しそうな空気を醸し出していて、つい声を掛けてしまう。


「えっと、なんかごめんね」


「アイラさん。私も金銭感覚がおかしいのは自覚してます。あんまりお金を使ってきませんでしたから」


「うん? うん」


「でもですね、講習で学んだんです。一般人が如何に生活をしているのか。確かにですよ、私も食べ物のことになると財布の紐は緩みます。でもですね、本当に素寒貧になるまで私を止めていないとは思いませんでしたよ! 鞄も高いし地獄絵図ですね! 私達がミャルナントで良かったです!」


 どうやら貯蓄を考慮した金額を言っているのかと思っていたらしい。

 それが普通なのは理解しているがアイラにその感覚はない。お金は横を流れる川である。必要であれば自ら掬い、また如雨露に入れた水は畑にまくものである。というかお金なんてなくても生きていける。

 明細に記された残金は主食一つ満足に買えない金額であるが、そもそもあの鞄の金額をムエナは知らなかったのだ。驚愕するのも無理はない。


「うーん。うん。よかったね。でもお金が無いことの何がダメなの? お宿に泊まれないくらいじゃない?」


「いやっ。まぁ、私達は食費は要らないですし、まだ来たばかりで納税先もありません。ですが、いつ何に出費が出るのか不安なまま、なおかつ収入が安定してるとはいい難い私たちは少なくとも貯蓄をするはずなんです。

 もし仮に、すごく寝心地のいいお高い枕があったとしてそれを買うのに……って本当にアイラさんにはお金って重要じゃないんですね」


 アイラの疑問の意を受け取ったのか急速に語気を弱めてくる。そう、アイラにはそもそも人間社会を演じる以上に、お金の意味はない。必要な分は作り出すか寝食を省いて四六時中稼げばいい。


「うん。寝るのが好きだから寝てるけど、三大欲求? とかいうのも必須じゃない。それに土地代とか税金とか、ミャルナントだったら気にしなくていいことばかり。まぁ宿に泊まれなかったら通報されるくらい。機人の人はメンテナンス費が馬鹿にならない、って下でちょっと聞いたけど。私に老後、っていう物があるのかもわからないし」


 最悪詐欺の類に引っかからなかったり、返済義務を負ったりしなければ何にも問題はない。そこまで考えて向こう五十年は壊れる保証のない物を買い集めたりはしてない。快適なの? 買い足すのめんどくさいから買っておこう、という考えの元である。


「それでは本当に生きる意味っていうのも見失って当然ですね。承認欲求はあるみたいですけど、寝てたら忘れられますしね。うーん。本当にあの条件で良かったです」


 金銭の神というのもまた、居るのだからカジノや価値は確実にある法外な値段の商品などいくらでもお金の用途はあるが現状まだ魅力を感じていない。


 とりあえず抱き枕は必要出費として計算に入れて貰えたがアイラの魔法鞄化までは見送りになった。金銭的な問題とアイラの倫理感覚な問題で。この金銭感覚だと持ち物に上限が無いと商店街が大変ありがとうございましたな状態になってしまうとか。


 話し合いの結果、出立の前に抱き枕だけは買っておこうとなり、前回言った商店街に出ることになった。ソレアにそのまま街を出るかも、とだけ伝え部屋を出るが、別れに慣れているようで元気で、またこの街に来てねと言葉はあっさりしたものだった。


 昼間の眠たくなる日差しが降り注ぐ商店街の人入りは、お昼ご飯が近いこともあり屋台街が活発だ。働いてる人たちがお昼の休憩を取っているもあり賑わいを見せる中、前回行った旅道具屋は様々な人達が用事で訪れるのか少しだけ賑わっている。

 ムエナとは前回会話していた店員に鞄はまたの機会にと伝えに行くと言って少しの間別れた。


 旅の際、荷物は決して嵩張ることがないこの時代において、抱き枕が無いと寝れない人は旅用の抱き枕を購入し、出先で使うらしい。今週の流行り、と大々的に貼られていた。

 自分の寝姿を思い出せば、体全体で包む形で寝るので、それにフィットするような抱き枕が欲しいと思い一つの紙を見つける。

 大抵のお店に置いてある商品紹介を兼ねた選び方の広告だ。おすすめの枕は、身長から算出して等と書かれた広告の紙を参考にするとできるだけ細く、自分より大きい枕では安心できないとか。

 デザインは様々で、料理の柄が描かれたものもあれば金額によっては、デザイン元の匂い、音、空気を再現する高性能抱き枕もあったりして、この世界は何事にも全力投球だなとアイラは思った。


「アイラさーん。決まりましたー? あんまり高いのはダメですよー」


「分かってる。一応この三つあたりで悩んでる」


 アイラが悩んでいるのはスライムで出来た形自由のひんやり枕。

 グレアルナ(鷲のような竜)の雛から抜けた羽毛で作った、温かく包むような金額的に少しだけお高い枕。

 抑えないと浮いていきそうな程軽い、が起きるまでやさしく吸い付いて離さない完全密着枕の三つだ。


「鷲のような竜……って何です?」


 ムエナは近くにいた店員を捕まえ質問を始める。落ち着いた空気の店員は、その枕の説明を淀みなく語った。


「お客様。グレアルナ、通称鷲のような竜とは雛の時は鷲のような態であり、大人になると鷲の時に生えていた羽毛が抜け、その後に鱗が生える異世界産の生物でございます」


 そんな生き物もいるのか、と感心して頷いてしまった。店員は頷き返してから宣伝の言葉を口にする。


「ええ。この商品はグレアルナの飼育家から沢山の愛情をもらった雛の羽毛を譲り受け、それを表面と中に埋め込み縫い上げることによって弾みは柔らかく、外はは母鳥の如く優しい手触りに仕上がっております。

 森を行く際には、特におすすめの商品となっており、家でも外でも職場でも外見から使いやすい一品です」


「……なるほど。ムエナ、これほしい」


 店員の見事なセールスに当てられたアイラは目を輝かせて、何かに少し悩む素振りを見せている小さなお母さんにおねだりをした。

 無駄遣いか、そうでないかは互いの差配で、使わない分がそのまま貯金に繋がるお金の約束はムエナの差配で加減が変わってくる。お金を限界まで使うのはあんまりよくないらしいが、どちらも引けなければミェナが決めるので困ったことにはならない。


「うーん。まぁアイラさんが昨日買ったもので既に旅支度の品はすべてそろってますしね。おかげで余計な出費もしばらく出る、ということもなさそうですし。いいですよ。大事に使ってくださいね。あ、地図もいっしょにお願いします」


「やった! 店員さんお会計!」


 今回は目くじらを立てるほどの金額でもなかったのか無事に許可が出たことに喜ぶ。喜びのままステップを踏みそうな勢いで会計を済ませれば、旅支度はこれで終了となる。

 あとは隣の隣の町、アーシュカナの街に行くだけとなり、最後に歩きながら子冊子を読んでおこう、と色鮮やかな子冊子を開いた。


 今いる街の名前はとある十二柱の言葉で、原初の森前の意でセンノーマタ=シュカナと名付けられているが、長ったらしいので大体の人からはシュカナ森街と呼ばれている。

 と子冊子を読んでいたらそんな言葉を見つけ、そこまで書いて神に怒られないのかとちょっと意外に思う。


「街に入ったときにもらった子冊子に街の名前なんてかいてあったのですね。しかもアーシュカナの街までは軽い概要が書かれているのが、私達みたいな存在には嬉しいですねー」


「ここ一帯は技術神の管轄らしいね、意外と人の感覚が多いのかも。あれ。もしかするとムエナからすると国がない、っていうのは違和感あるのかな? 私はそもそもモノを知らないから何とも言えないんだけど」


「あー。国、ですね。私は無いほうが嬉しいとは思いますけど、違和感は違和感ですね」


 国に関する講習をふと思い出し、忘れないうちに諳んじる。復習は大事、とのことだ。


「講習では『第一に総ての世界を創造しは大二柱である』だっけ。『執政仕るは数多の神々と、その数多の信徒。神々君臨すれども、人は人の法、神は神の法。それぞれ理不尽で一方的に裁くべからず』ね」


 アイラの言葉を引き継ぐためにムエナは口を開いた。少しばかり苦い顔をしていて飲み込み切れていないことを察することができる。


「『第二に我ら国を創るべからず。衆を創り、個を害すならばまずその愚を捨てよ。貴様ら同じ混沌より生まれし我らが子である。故に塵一つまで平等である』ですね。この髪一つに至るまで、よその世界の元もここの世界が発祥だとは思いませんでした」


 どちらも大二柱が発したこの世界の大原則だ。その発言の本質は決して忘れられることなく、この世界に残り続けている。

 つまり第二の言葉が言いたいのは平等なんだから、優劣競って広いけど狭い世界で戦争とかするくらいなら国を捨ててよ。愛してるのは塵でも変わらないから、となっていく。

 ほかにも色々あるが、とにかく国は存在しない。あるのは街かそれぞれが属する社会集団になる。

 ダルレアンはこの辺の解説が上手かった。わかりやすく、けれど勘違いしない程度の解説をしてくれたのだ。

 

 ある程度の買い物は終わり、あとは出発するだけである。と言っても外側に居たので結界は目の前なのだが。


「さて、街を出る所まで来たね。相変わらず変な膜だ」


「そうですか? ちょっとホヨホヨしてる所とかかわいくないですか?」


 アイラはそれは確かにそう、と頷いて、息を合わせ南から街を出た。出るときは同時だ。この街に入ったときの子冊子も淡く、光るように溶けて消えく。


「これから、末永くよろしくね。多分私寿命無いから」


「はい。よろしくお願いします。ふふふ、プロポーズみたいですね。私は死がふたりを分かつまでになります。文字道理、ですよ」


 緑の絨毯が両手に広がる旅風景を感慨深い気持ちでゆっくり見回しながら歩き始める。アイラが最初に着た時見つけた川は遠く離れたところに向かっているのを発見し、どこに行くのか、そもそもあの川は固定化されてるのか、少し気になるところだ。

 しかし背の小さいアイラ達の歩みは遅く、このままでは一般的に掛かる日数では着かない事は必至だ。しかしそれでも休みは入れることなく歩みを進めた。そして暇を埋めるため、小さな変化に気が付けば教え合う。

 自分の話や過去の話を積極的にせずとも話は弾んだ。アイラは過去がない、逆にムエナは膨大なのであんまり頻繁にすることは憚られたので自然と避けている。


 太陽が傾く十六時の頃になると、二人は会話をせずとも過ごしていられるようになった。

 歩いても、歩いても風景は変わらないこの状態に、会話をせず隣を歩く存在のなんと心強いことか。そのことが嬉しく、アイラは小さなお母さんの横にしっかり着いた。逃がさないぞ、と。ちょっとのお茶目を見せるアイラにムエナは困り顔だが、許してくれる。


「んもう。歩きづらいですよーアイラさーん」


「んへへ」


 もうすでに通行人は居ないので小さな孤独感を感じるが、何の心配もないと言い聞かせあれこれ考えていた。その中でアイラは妙案を思いついた。


(あ、そうだ。いや待てよ、必要量が圧倒的に足りなくない?)


 思いついた気がしただけで、予想以上に消費がありそうなので計画を立てるのに百面相し続けていて、集中の余り足が止まってしまう。


(もし灰霧が、あれをつくるとしたら……場合によっては一か月。そもそも固定化せずに使うのはもったいな――)


 あれこれ考えていると、途中で大きめのムエナの声が届く。聞き取れはしなかったが、アイラはようやく思考から帰ってきた。


「なんですかアイラさん、そんな色々考えちゃって。地形変質はまだまだ心配いらないみたいですよ。」


「あ、ね。うん。そうだね。魔力計もあんまりブレてないもんね」


「ですね。というかアイラさん、私が子供扱いしても怒らないんですね」


 疑問の表情で言われた内容だが、アイラにとっては子供扱いは心地いいくらいの勢いなのでうまく理解できなかったが、とりあえず返答はする。


「うーん。私はあんまり気にしないかなー。身の丈にあってる気もする。というか実年齢を気にして他人に迷惑かけるより多少は自分の精神状態を気遣うべき、みたいな? そんなかんじ」


 実年齢って何歳だよ、と思いつつ理由を述べるが特にこれといった理由はないので内容が軽くなってしまう。


「なるほどですねー。この喋り方で私の見た目だとたまに怒る方もおられるのでー少し気にしてしまうんです」


「そうなんだ。まぁ、居るらしいよね。なんかだけは知識はあるからなんとなくわかる」


 苦労性なんだな、と感じはしたもののムエナが気に病んだ風は無いので、アイラは手を取って繋ぐことにした。嬉しそうな笑顔を向けてくれたので、アイラの心も軽くなる。

 そろそろ野営の時間で、支度を始めなけばいけないので二人は街道を逸れていった。

ありがとうございました。

下の星、欲しいな。あとブックマークと、感想も欲しいな。


アイラの一言。

「抱き枕使いたい」


以下お知らせ。二十話くらいあるときに見る必要はないよ。


こんにちは、こんばんは。はい、もにもにです。

この話を執筆時、資料を集めていると文法、引いては人称の解説を見まして。はい。はい。ドヘタでしたね。素人の誹りを受けても何も返せないです、はい。

正確に理由を話すと、(人により意見は変わりそうだが)人称とは一人称、それから派生した三人称一元。三人称では三人称一と神の視点があるそうです。

人によっては分類も違ってきそうで、正直どこからどこまでなのかわかりません。多分正解はないです。

なので、とあるサイトさまの記された三人称一元がわかりやすく、また書きやすいのでほぼすべての話を大幅改稿することになると思います。(分類の仕方も見習いました)

サンプルはこの十一話です。

確実に言えるのはムエナの調理に行くシーンは確実に閑話行きです。

事実は事実のまま、変更はせず描写、設定説明の過多を今のうちに直します。何度も何度も改稿して申し訳ございませんが、私は一つ一つに全力で向かいたいのです。お金は要らなくてもいい、けれど自身が下手であるならば、次読んでいただいたときにベストと言えるように尽くしたいのです。

また、この書き方になるのであれば私が少し自信を持てる一部描写の綺麗さはもう少し出しやすくなると思います。ので、次また四日後ですが遅くなったら申し訳ございません。

完結はさせます。はい。


この話だけ早期投稿で、次回投稿は三月四日となることを、お詫び申し上げるとともに、どうかお許しください。


統合して話数がずれてます。

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