羽化せぬもの。
訳のわからないものって、怖いですよね。
虫が苦手な方はご注意ください。
なんだか、最近とっても眠たい。
外に出るのもめんどくさいし、
このままずーっと部屋にいたい。
せっかく受かった学校だけど、
そんなの今はどうでもよくて。
友達からの連絡もくるけど、
携帯を取るのも億劫で。
部屋の外からはお母さんの声も聞こえるけど、
鍵を開ける気にもなれない。
あー、めんどくさい。
今日もまたお母さんの声が聞こえる。
“不登校“?“引きこもり“?
いやいや、そんな大袈裟なもんじゃないでしょ。
なんて言うかなー。
あ、そう、かくれんぼ!
色んなことから、ちょっと隠れてるだけ。
「部屋から出てきて!」
って言われたら、
「まぁだだよ。」
って返してみたり。
とりあえず今はまだ出ていけないの。
あー、また眠くなってきた…。
―数日後。
娘の様子に異変を感じた両親がドアをこじ開けるのとほぼ同時に、娘の部屋の窓ガラスが大きな音を立てて割れた。
慌てて窓に駆け寄った父の目に映ったのは、物凄い速さで飛び去る大きな影だった。
そして娘のベッドには、胸から腹へかけて大きく裂かれた、娘そっくりの蛹のようなものが横たわっていた。
両親はその娘のようなものの世話をしながら、今でも彼女が“羽化“するのを待ち続けているらしい。
子どもと蝶の幼虫を育てていたのですが、残念ながら蛹のままで終わってしまう個体もいくつかいました。
他の虫に寄生されると蛹になっても羽化することができないそうです。
かくれんぼの上手な虫たちですね。