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1.無言キャラは大抵脳内独り言が激しい。


私の名前は二階堂碧衣。

学校ではほとんど誰かと話すことはないし、頭の出来も特段いいかと言われればそーでもないないと言わざるをえない。パッとしない17歳真っ盛りの女子高生である。



なんというか、自己紹介から入る小説って少し安っぽさがにじみ出てしまうな……。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど。



「あ、二階堂さん。これから遊び行くんだけど来ない?」


「あ、すみません。今日は予定があって」


「あー…そっか。じゃあ、また今度遊ぼうね」


「はい。ぜひ」



本当は差し迫るような予定などなかった。

しかし、しょうがないではないか。おそらく近くにいたから声をかけただけのお世辞程度の誘いに本気でのってしまったら、それこそ相手も迷惑だろう。だって、今の子とは一年のときからクラスが同じというだけで特に話したこともないのだから。



あ、そういえば予定はないといったがよく考えたら無いことも無い。今日はイベントがある日だった。急いで家に帰らねば。



私はクラス替えが終わったばかりでみんなが新しい交友関係を築く中、せかせかと荷物をまとめ、放課後の学校をあとにした。





家に帰ると親から「高校生なんだからもう少しおそくかえってきてもいいのよ。友達とかと遊ぶとか」という声が居間から聞こえたが全力スルーで自分の部屋に駆け込んだ。そんなものができれば私はもっと明るい性格だっただろうさ。





鞄をベットのわきに置き、VRヘッドセットを装着して横になる。私の趣味はVRMMORPGである。放課後どころか休みの日も特にやることがないので極めてしまっている。

どれくらいやり込んでいるかと言われればざっくりプレイヤーランキングのようなもので3位にいるくらいにはやりこんでいる。

悲しいかな。時間がある故に。





「あ、2ΧDOさん。こんです!」


「どうも」



ログインすると近くにいた人が声をかけてきた。たしか、昨日一緒にパーティを組んでクエストをして終わったあとにフレンドになったんだっけか。まぁ、フレ枠全然余ってるし気軽にしてくれていいんだけどね。



「これからどこか行かれるんですか?」


「いや、特には」



くそっ…本当はイベント走りたいって言うだけなのになんか何もないことにしちゃう。ゲームですら言いたいことも言えないのか、お前は!



「あー、それじゃあ今日から新イベ始まるんでそれしてみたらどうですか?」


「そうですね。そうしてみます」


「はい。引き止めてしまってすみません。また、クエスト行きましょうね!」



腕を振る彼を尻目に私はその場を颯爽と去った。いや、すたこらと逃げ去ったというほうがいいかもしれない。これ以上喋るとボロが出そうだったので相手が切り上げてくれて助かった。





さて。イベントに行きたいのは山々なのだが今回のイベントは手に入れられる素材や報酬を考えれば絶対にやったほうがいいのは明白だ。

だが、正直気乗りしない点が一点。

イベント内容が大人数参加型のレイドバトルなので、人のパーティに入らなければならないということだ。 


昨日、あの人とパーティを組んだのは元々のフレンドの紹介というワンクッションがあったからで1on1では絶対無理だった。初対面の人とは話すらままならない。


それにレイドに参加するにはチャットに流れてくる参加要請から入るか自分で部屋を建てるしかない。参加するのはなんだか気が引けるし、自分で部屋たてするにもメンバーが集まるまでの空気感に耐えられない。



はぁ、こういうときにクランに入っていればクランメンバーでパーティ組んでいけるのに……。



私はこういう面倒くさい性格も災いしてどこのクランにも所属していない。でも、本当はどんなところでもいいからクランには入ってみたい。というか、いっそ誰か誘ってくれ。なんで、多少仲良くなってフレになってもそこで終わりなんだ。仲間にしてくれ。なんでもするから。




このクソ長い脳内一人語りをしている間にハンターギルドにたどり着いた。特にすることはないのにいつも気づいたらここに来てしまっている。



ギルドに入ると他のハンターからの視線が集まる。どーして、いつも凝視してくるんだ。それだけで毎秒5ダメージずつ減っていくからやめてほしい。



依頼の貼っているところに立って適当なものを剥がして受付に持っていく。もう少しゆったりして選びたいがここにいたら注目されてしまうのですぐにクエストに行きたいのだ。だから、いつも取りやすい位置にあるやつをテキトーにやっている。選んでやったのはほぼないかもしれない。

 

アイテム整理もせずにそのままクエストに出発した。






【ギルド内にて…】


「でさ〜…って、おい」


「おっ、今日も来たか」


この時間になるといつも『傭兵』がギルドに顔を出す。『傭兵』とはランカーに与えられる二つ名で、いつもソロでクエストをしているためそう名付けられたらしい。



依頼板の前に立つと無造作に一枚受付に持っていって無言でテレポートしていった。


「見たか?」


「ああ。確かあそこに貼ってあったのって4人以上推奨のやつだよな」


「ランク5以上のハンターがな。ちょっとしたレイドクエストだよ」


「やべぇな…。俺ようやく4になったっていうのによ」


「今、彼女8らしいよ」


「桜花繚乱のクランマスターもそんくらいだっけ?」


「たしかな。現時点で最高レベルだろ」



どれだけやりこめばそんなところに到達できるのだろう。俺も毎日5時間はやっているんだが……。



「あっ、帰ってきた…」


「何分だ?」


「5分13秒」


「レコードまであと3秒だったな。今日は調子がいいらしい」


「話しかけようにもクエスト終わった一瞬で出ていくから話しかけれねぇんだよな…」


「フレ申請してみようかな」


「やめとけ。どーせ、俺らが申請したって相手にされなねぇよ」


「だよなぁ…」









あー、もうどうしていつもこうなんだ!

誰かと一緒にクエスト行きたいのに!


しかも、今のクエスト、パーティ推奨じゃん!ギルド内の人絶対「パーティのやつソロでいく悲しい奴」って思ってる。くっそー…次はもう少し別のところからとってみよう。多分あそこがそういう依頼のゾーンなんだ。




「はぁ…」 



このゲームを始めたきっかけはリアルで友達がいなくても、ゲームの中でさえフレンドがいれば十分充実していると自分に言い聞かせるためだった。それなのに、ゲームですら親しく話す人はいない。


それなら、このゲームをやり込んでもっと有名になれば声をかけてくれるのでは?と思い、必死にランクを上げても謎に「傭兵」とかいうふざけた二つ名をつけられるし……。なんなんだよ、もう。






フレもあまりインしてないし、今日はもう落ちよう。

そんで、明日フレンドからレイドの誘い来るの待とう。そうしよう。



がんばれ、明日の私。

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