神は男の為に女を創った
2022.01.23 誤字を修正
「別れましょう」
ある日突然、彼女がそう言いだした。
「え?! 何で? 本気?」
「惚けないで! また浮気したでしょう!」
愛しているのはお前だけだって言ってんのに、何で解んないんだろう?
あ~あ。こういう所が無ければ最高なのに。
「あんなの遊びだって。愛しているのは、お前だけ」
「だから、何よ? 私は遊びでも嫌なの。前に散々言ったでしょう。良いじゃない。別れれば、遊び位で怒る妻がいなくなるんだから」
そう言いながら、家を出て行こうとする。
「ちょっ! 待ってよ! ごめんって! もうしないから!」
「前回もそう言ったよね? 嘘吐き」
何だよ。この俺が謝ってやってんのに! 何様のつもりだよ?!
これだから、女は……!
腕を掴んで何とか引き留めた。
そして……。
気が付いたら、彼女が倒れていた。
しかし、何か違和感がある。
よく見ればそれは、彼女そっくりの人形だった。
「な、何だよ、これ……?」
動揺を落ち着ける為に煙草を一服。
何となくテレビを付けた。
『本日、未明……』
何時も見ている報道番組だったが、何時もの女性ニュースキャスターがいない。
チャンネルを変える。
『それでは、VTRを……』
バラエティー番組が映し出される。
しかし、女が一人もいない。
ドラマ。
街を歩くエキストラも男ばかり。
CM。
新型等身大女性人形の宣伝。
アニメ。
声優も男だけ。なのに、女キャラがいる。ファンタジーらしい。
「何なんだよ、コレ……?!」
一般人ターゲットのドッキリ? まさか!
俺は、家を飛び出した。
辺りを見渡して走るが、男しかいない。
近くの女子校に向かったが、校門から出て来るのは男子。
車に乗っているのも男だけ。
女性服を売っていた店は、男性服を売っている。
「おお! 久し振りだな! トオル!」
声をかけて来たのは、高校の時のクラスメイトのケイジだった。
「ケイジ……」
知り合いがいる。
此処は、女がいた世界と同じ世界なのか? それとも、パラレルワールドなのか?
「何か、今日、女を一人も見かけねーんだけど」
「何言ってんだ。いるだろう? ほら」
指さす方を見れば、等身大女性人形がショーウィンドウに飾られていた。
「そういうんじゃなく! 生身の!」
「おいおい。頭でも打ったのか? 生きた女なんて、いる訳ないだろう?」
「女がいない訳ないだろう!」
俺は、女がいなければおかしい理由を探す。
側を、小さな男の子を連れた男が通り過ぎた。
「そうだ! 子供! 子供が生まれるんなら、女がいる筈!」
「漫画と現実がごっちゃになってるぞ。本当に、頭を打ったのか? 子供は、神様が作って天使が授けに来るんじゃないか」
ケイジは、こんな性質の悪い冗談を言う奴じゃない。
本当に、女がいない世界なのか?
俺は、何を楽しみに生きれば良い?!
女がいない世界なんて糞だ!
「うわあああ!!! こんな世界は嫌だ! 元の世界に返してくれ~!」
「トオルは本当に、生身の女がいない世界に移動したと信じているんですか?」
ケイジは信じられず、医者に確認した。
「そのようです」
トオルは、精神科病院の閉鎖病棟に入院する事になった。
俺は正気なのに、何で入院させられてるんだ?!
出せ! 誰か、助けてくれ~~!!
「人間が作った人形なら兎も角、神様が創られた『女』を壊しておいて、精神鑑定で無罪か」