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お気の毒ですが神々の争いに巻き込まれてしまいました  作者: no name
1.始まりの村とモラトリアムの終わり
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10.黒い水差《タシットアグリーメント》

 賑やかな食事時も(たけなわ)を過ぎ、客層が徐々に重々しい装備をした者たちや生傷を抱えた者たちに変わり、店の空気も静まり返っていく。

「さて、腹も満たされたことだし、そろそろ君の疑問についても答えてあげようかな。お姉さん、”カラの水差し”もらえるかな」

 空いた皿でできた塔を下げ終わったウエイトレスに注文の終了とともに水差しをカイトが頼むと、先ほどまで愛嬌のある笑みを振りまいて給仕をしていた女の子から笑顔がスッと消える。

 その変貌ぶりに驚く太郎にカイトが言葉を足す。

「俺たちみたいな人間は(おおやけ)にできない話や人に聞かれたくない話をすることもままあってね。店の方も気を回してくれるってわけ。ああ、ありがと」

 感情の無い面持ちで”黒い水差し”と二つの”黒いコップ”をテーブルに置き、少女は一言も発さずに去っていく。カイトの言葉にも反応を示さず店の奥へと消えていった。

「それで、『カラの水差し』ってのがその”合言葉”ってことか」

「ご名答。ほら、向こうのテーブルを見てごらん」

「あれは……」

 カイトに促され、太郎の視線が店の奥――一席だけ離されて置かれているテーブルへと移る。

 そこに置かれている水差しとコップの色は太郎たちのものと同じ、黒色だった。

 静寂ながらも談笑したり、話し込む人たちは揃って店の奥に背を向け、ウェイトレスたちも必要な時以外は視界に入らないように背を向けている。

 まるでそこにはなにもないと言わんばかりに振る舞う一同の光景は太郎にとって新鮮で、そして何より異様に映った。

「ああやって、水差しとコップを見える場所に置いておくことでみな気を遣ってくれるのさ」

「なるほどね――」

 カイトに促されて視線を店内の人々に向ける太郎。

 先ほどまで熱烈な眼差しを送っていた店員の姿はなく、またカイトがそう感じたように、太郎のことを物珍しく思い観察してくる人の姿もなかった。

「――それで誰もこっちを見なくなったことか」

「そういうこと。いつ自分たちが使うかわからないからね。ま、暗黙のルールってやるかな」

「暗黙のルール、ね……」

 水差しを取り、置かれたコップ達に水を注ぐ太郎。

 透明だった水がコップの黒にのまれ、黒く映る。

「すべては真っ”黒”な闇の中に、ってか」

「うまいこと言うねえ」

「……よしてくれ」

 クスッと笑いながらコップの水を口に運ぶカイト。

 そんなつもりはないと、辟易しながらコップに手を伸ばす太郎。

「それじゃま、本題に入ろうか。君の質問に可能な限り答えるよ」

「……それじゃあ――」

 質問を吟味する太郎を眺めながら、カイトが空になった二つのコップに水を注ぐ。

 再び水で満たされたコップの水を口に含み、少しの間を経て太郎が口を開いた。

「――まず、この世界はなんなんだ」

「随分と壮大だね」

 茶化すな、と睨む太郎に飄々(ひょうひょう)と笑うカイト。

 遊びのない一向きな太郎の姿に、カイトは肩をすくめてみせるだけだった。

「もっと気楽にいこうよ。別に質問の数があるわけでもないし、お金だって取らないよ」

「こっちは自分が誰かもわからないうえに知らない世界にいるんだ。そりゃ必死にもなるさ」

「連れないねえ」

 未だ肩の力が抜けない太郎にカイトはやれやれとため息をつくしかなかった。

はじめての方、はじめまして。そうでない方、ご無沙汰しております。氷雪うさぎと申します。この度は本作品をお読みいただき、ありがとうございます。

 この作品はラノベ大賞作品を書くにあたって、準備運動や長らく作品を書いていなかった自分の文筋(作品を書く力)を鍛えなおす一環で書いています。

 だいたい60分を目安に執筆時間を区切って書いていますので、文量は多少バラついてしまいますが、できるだけ毎日書く形でお送りしようと思いますので、どうか最後までお楽しみください。


 ついに十話を迎えましたね。少しずつ書くこともあって話数の割に文量が少ないうえに書くペースが最近バラつきだしていますが、できるだけペースを崩さないように頑張っていきたいと思います。

 それではまた次回の後書きでお会いいたしましょう。



氷雪うさぎ

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