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お気の毒ですが神々の争いに巻き込まれてしまいました  作者: no name
0.お気の毒ですが神々の争いに巻き込まれてしまいました
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1.開局前夜《プロローグ》

 どこまでも続く、一点の曇りもない白の色。上下左右、どこを見ても白一色の世界にたたずむ少年。

「……っ……ぅ…………」

 その視線はまだ虚ろで、体こそそこに在るものの、意識はまだ遠い。

 風も吹かなければ、生物の息づきもない。音のない世界。

 少年のわずかな吐息、微声だけがその場を漂っていた。

「ん……ここは……?」

 数秒の時を経て、少年の意識は覚醒する。

 ゆっくりとした動きで、辺りを確認するように一瞥すると、己の置かれた状況を理解する。


 何が起こっているか、まったくわからない――それが少年の手に入れた理解だった。


 改めて周囲に目を配る少年。どこを見ても変わらない白世界に困惑の表情を隠せない。

「どこだ、ここ……?」

「あら、ようやくお目覚め?」

 思考の道しるべを探しに歩を進めようとしたその時、不意に少年の背後から声がかかる。

「随分とお寝坊さんだこと」

 さらに一つ。

「本当に大丈夫か、こんなやつで」

 そしてもう一つ。

 少年の背に向けて声が飛ばされる。

「――あんた、たちは……?」

 振り返った少年の前にいたのは三人の少女だった。

「おはよう。調子どう?」

 三人のうち、もっとも背の小さな少女がはにかんだ笑みを浮かべる。

「私、こういう頭の悪そうな方は遠慮したいのだけど」

 三人のうち、もっとも背の大きな少女が冷ややかな視線を少年に向ける。

「ならあんたは辞退ってことでいいじゃん。あたしはどんなやつでも関係ないし」

 二人の少女の間を取るような中背の少女がニヤリと笑う。

 三者三様の反応に、少年は別の戸惑いを覚えた。

「驚くのも戸惑うのも無理ないわね。ここは……っと、時間がないから手短に話すわね――」

 どこからともなく、身の丈に似合わない大きな本を取り出し、一番小さな少女は話を続ける。

「――おめでとうございます。あなたは見事『神の使徒(エクスミード)』に選ばれました。早速ですが、この場で”契約”をしてもらいます」

「契約?」

「そう。私たち”神”と”契約”し、”神の使徒(エクスミード)”になってもらいますの」

「はあ……」

 事情を飲み込めていない少年に少女たちは続ける。

「それじゃま、さっさとあたしと”契約”しようぜ」

「ちょっと、彼と契約するのは私よ」

「何言ってますの。私と契約するに決きまってるでしょ」

「ふざけんなよ。あんたさっき『私、こういう頭の悪そうな方は遠慮したいのだけど』って言ってたじゃねーか」

「それとこれとは話は別ですわよ――」

 我こそはと名乗り出ては非難の声を上げる。

 そんなやりとりが数巡もする頃には事情を飲み込めていない少年の表情が呆れたものに変わっていた。

「あのさ、その契約とやらは一人としかできないのか?」

「そうなんです。神の使徒(エクスミード)は神と人とを繋ぐ”契約”なので、一人としかできないんです。なので、ぜひ私と――」

「いや、あたしと――」

「私と――」

 抜け駆けさせまいと少年に詰め寄る三人の少女。


「――”契約”してくださいっ!」

「――”契約”しよーぜ!」

「――”契約”しなさい!」


 三人と自分との間にある温度差に、少年の指は自然と頬に向かい、手持無沙汰を解消せんとしてかゆくもない頬をかき続ける。

「ふーん……」

 三様の申し出に少年は困り果てていた。

「そもそもさ、その”契約”したら俺どうなるの?」

「こまけーことはいいじゃねーか! どうせ”契約”するまではここから出られないんだし」

「えぇー……」

「ともかく。早く相手を選んでください!」

 少女たちの足がさらに一歩、少年のもとへ進む。


「さあ!」

「さあ!」

「さあ!」


 その勢いに押される形で少年が後ずさるも、少女たちの歩みはその距離をさらに詰めにかかろうと全身を続けた。

「あ、いや……その……」

 いよいよ時間がなくなってきたのか、三人の目的が”少年の返答”に変わる。恫喝めいた気迫で行われる懇願に、少年の頭から”拒否する”という選択肢が抜け落ちてしまっていた。

「じゃあ――」

 少しの間、思いをめぐらしたのちに少年の手がゆっくりを上がる。

「あんたと”契約”するよ」

 そうしておもむろに上げられた手で最も背の小さな少女を指さす。

 その結果に三人の少女の誰もが驚きを隠せないでいた。

「わ、私、ですかっ!?」

「ああ。どうせ誰かと”契約”しなきゃここから出られないんだろ? だったらあんたでいいや」

「はいっ! ありがとうございます!」

「おいおい、ちょっとあんた!」

「どうしてあの子なんですの!」

 自分が選ばれなかったという結果に異議を唱える少女たち。

 そんな二人に少年はなんの恥じらいもなく言い放つ。


「いやだって、一番おっぱいが大きいから」


 あまりにもあっさりと、

 そして堂々とした受け答えに、

 その場にいた少女たちの流れる時間は一瞬で凍り付き、


「「「え……えぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」


 わずかな間をおいて、驚愕の声を上げるに至った。

 はじめての方、はじめまして。そうでない方、お久しぶりです。氷雪うさぎと申します。この度は本作品を一読いただき、ありがとうございます。

 この作品はラノベ大賞作品を書くにあたって、準備運動や長らく作品を書いていなかった自分の文筋(作品を書く力)を鍛えなおす一環で書きました。

 だいたい60分を目安に執筆時間を区切って書いていますので、文量は多少バラついてしまいますが、できるだけ毎日書く形でお送りしようと思いますので、どうか最後までお楽しみください。


 まだだれ一人として名前が出てこないお話ですが、ぜひ最後までお付き合いいただければ無上の喜びでございます。


 それではまた次回の後書きでお会いいたしましょう。



氷雪うさぎ

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