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Answer  作者: 釜鍋小加湯
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 追試を終えたヒロキは、帰宅前に駅前のゲームセンターに寄ろうとしたが、やんちゃな三人組を見つけ入るのをやめた。何処かに寄って帰ろうと探していると、ある男が此方に向かい歩いてきた。

「今帰りかい?」

 対面早々、白い歯を見せて瀬名タカフミは訊いてきた。ストライプのYシャツを着ていた。

「追試があって遅くなったんだ」

 そう言うとヒロキは、目を逸らした。気にすることでもないと思っているのに、この話題をすると落ち込んでしまう自分が嫌になる。

「何か買ったの? 本屋からタカフミが出てきたの見えたんだけど」

「買いたいのがあってね」

 鞄を開き、タカフミは薄茶の紙袋を取り出した。袋に貼られたテープを丁寧に剥がしヒロキに中身を見せた。

 ゲームの攻略本だった。数年前に発売されたゲームソフトのものだった。パラパラと捲っていると、タカフミはそのゲームの話を口にした後、中古で三百円と値段を言って口を閉じた。今のところ必要はないが安価なこともあり、売り切れる前に買っておいたそうだ。

 タカフミはゲーム好きだ。それはヒロキと同じだが、決定的に違うところがある。彼は頭が良いい。

 仲が良くなったのは、中学一年生の時だった。クラスが同じになり、席替えで席が前後になったとき流行りのゲームの話で盛り上がったのがきっかけだった。

 二年以降はクラスが別れてしまったが、休み時間に廊下で話をしたり、休日にはお互いの家を行き来して一緒にゲームをすることもあった。

 タカフミは、まだゲームの話をしたそうな顔をしていたが、ヒロキは本を返して遠慮がちに口を開いた。

「タカフミは、今回の小テスト何点だった?」

「追試にはならなかったけど」

 低いトーンになり、彼は袋に戻した本を鞄に入れて話を繋げた。

「60点だったよ」

「何だかんだで合格してるのだから、流石だよ」

 そう言いながら、ヒロキは意外だなと思った。中間や期末テストで高得点を当たり前に叩き出すわりには、いやに得点が低い印象を受けた。もしかしたら、今回の小テストは難易度が高かったのか。でも追試を受けた時の顔ぶれに、殆んど変りはなかった。難しいなら、人数がもっと多かった筈だ。ゲームをやり過ぎたのかな。そうだしても、タカフミにしては点数が低いなと思った。

「あのさ……」

 低いトーンのままの声が、顔を傾げていたヒロキの耳に入った。強ばった表情をしていた。気持ちが伝播したのか、ヒロキも急に緊張してきた。肩に力が入る。テストの点数を言ってしまったことを、後悔しているのかな。彼なら、この点数に満足などしているわけないだろう。

 小テストの点数を訊くべきではなかった。タカフミのプライドを傷つけてしまったのかもしれない。

 どうにかフォローをしようと、ヒロキは逸る気持ちで言った。

「小テストのこと? それなら誰にも言わないよ」

 タカフミは首を左右に振り小さく笑った。

「そうじゃないよ。実は、転校することになったんだ」

 トーンは元に戻り、穏やかな口調だった。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。感想などありましたら、宜しくお願いします。今後の執筆の参考にしていきたいと思いやす。

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