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塾の帰り、学校でも塾でも活発な生徒、渡辺ユイカに声をかけられた。
話をしていくうちに、ヒロキは今度の期末テストの合計の得点を競わないかと持ちかける。勝った方は好きな願いを叶えられるというもの。
ユイカは無理な願いもあると、当初は迷いを見せるが、この話に乗ることに。
お互いの願いを言い合い、駅で二人は別れた。
帰宅後、ヒロキはいつものように部屋に籠っていた。ゲーム機の周囲には、お菓子やジュース、そしてコンビニで買ってきたマンガ雑誌とコーヒーも置かれていた。部屋の物は散乱していた。絨毯の隙間を縫うように、それらは放置されていた。
深夜のバラエティー番組を観ながら、ヒロキはコンビニで買ってきたコーヒーを飲んでいた。夜更かしをするのも以前は休日前だけだったが、目薬の効果を知ってからは勉強の必要性が全くなくなった。そのため毎晩日付が変わってからも、数時間は起きて遊んでいた。
学校生活も楽しくなってきて、渡辺ユイカとデートが出来る可能性も出てきた。まさに目薬様様な日々だ。
期末テストに関しては、学校での小テストや塾の問題を解くときのやり方でいいだろう。周囲は、急激に頭が良くなった自分に興味を持ち始めていた。だから、期末テストでも満点は取りに行かない。ユイカに勝てる得点を取ればいい。
台所から持ってきたスナック菓子を開き、立て続けに幾つか口に入れパクパクと食べた。前歯を舌で舐めて、コーヒーを少し飲んだ。
全然思っていなかったことだが、彼女が出来るかもしれない。そう思うと、夜中だというのに胸が高鳴り笑えてきた。タカフミがいなくなり、寂しかった後に渡辺ユイカが現れた。やがて彼女になれば、そんな日々も悪くない。寧ろ、最高の毎日なのではないのか。
そしていつかタカフミに再会し、彼と同じ進路を辿れば、高校生活は親友と彼女がいる生活が待っている。
彼は何処にいるのか。それはまだ分からない。
彼が転校した週に連絡を入れたが、現在使われておりませんというアナウンスが聞こえてきて愕然としてしまった。それ以来、連絡は入れていない。
何処に転校するのかは、父だけが知っていると言っていた。家庭の事情が落ち着けば、きっと連絡をしてくれると、ヒロキは信じていた。
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