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ヒロキは小テストで満点を取り、担任やクラスの生徒から驚かれた。帰宅後は母親に褒められ、答案用紙を手に取っては喜んでいた。
タカフミは何故、自分にこの目薬をプレゼントしてくれたのだろうか。色々と考えてみるが、答えは出せなかった。
授業の終えた休憩時間。十分間しかないが、ヒロキは廊下に出ていた。窓際に立ち、二階から見下ろし景色を眺めていた。三時間目が体育のクラスが、晴れ渡る校庭に出てきていた。
この場に用があるわけではない。教室内の雑音から離れたくて、一人ふらっと抜け出してきた。
廊下には屯している生徒も少なくない。男子も女子も、雑談していたりトイレや次の授業のための移動だったりで、廊下は廊下で騒がしい。
窓を開けると、温い風がヒロキの顔に触れた。夏が近い。それもあって、半袖を着ている生徒も校庭には多くいた。
ヒロキはポケットから目薬を取り、手のひらに乗せた。極端にいえば、これを使い始めてから授業が一変した。当初これは、括弧の間だけ答えを映し出すものと思っていた。ところが授業を受けると、黒板に書かれた問題も括弧などなくても浮かび上がってきたのだ。
この現象が起きたときは余りにも衝撃的で、右手を持つペンに振動が伝わるほど手が震えた。目を大きく開いたまま固まってしまい、黒目だけ動かしたら理科の先生と目が合い名前を呼ばれた。
ぼそぼそと自信なさげに答えたら、何も言わずに赤のチョークでヒロキの言った答えが書かれた。周囲からの微声が彼の耳に入ったが、理科の先生が赤で書いた答えの説明を始めると、自然と収まった。
その後の授業から、先生から指名されたらどうしようなどの不安が徐々に減っていった。映し出した答えと実際の答えが合致するごとに、目に映る答えに信憑性が増していった。今に至って、不安は解消されたと言っていい。
この流れで行けば、期末テストも高得点が狙える。そして今は連絡がつかないが、タカフミと同じ高校に行けたら、また楽しい生活になる。どうにかして、彼と再会したい。
「ここ俺のとこー」
低い声に反応し、ヒロキは肩を強張らせて振り向いた。水色の景色から暗転し、白いYシャツを着たやんちゃな三人組が彼を扇形に囲んでいた。
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