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闇ギルド潰します


 王都に有る教会は孤児院と併設している、孤児には戦災、虐待、死別など、様々な理由がある、この孤児院では別け隔てなく子供達の幸せを願い愛する事で有名なシスターが居た。


 彼女自信エルフとして人間の街に生まれ、周囲から差別の目に晒されてきた、そんな幼少期の経験から無償の愛を子供達に注いでいた、そしてそれと同時にエルフ特有の美貌を狙うものも居た。


ガシャン!


「シスター!」


 突き飛ばされたシスターに駆け寄る少年。


「へっへっへ、いい加減大人しくしろよ」


 男がゲスな笑いをしながら近づいてくる。


「くっ、神の前で聖職者である私に何を……」


「おぉ、おぉ、シスターの説教は身に染みるね、だが、聞く気はねぇよ、どうせこれから変態貴族のペットになるんだ、味見くらいさせて貰うぜ」


 おぞましい言葉に息を飲むシスターの前に、子供達が出る。


「あぁん?なんだガキ供?」


 男が子供達を睨み付ける。


「お、お前なんて怖くないぞ!」


「そ、そうだ!直ぐにリザお姉ちゃんが来て、お前なんて倒してくれるんだからな!」


 子供達の言葉に男は笑い出す。


「くっあははは、お姉ちゃんが助けにくるだってよ!」


「おい、余り余計なことは……」


「いいじゃねぇか、どうせこいつらはもう二度と日を浴びる事はないんだから」


 静止する仲間の言葉を無視して、男は腰に下げていた袋から何かを取り出す。


「これ、な~んだ?」


 男が取り出したのは所々赤黒く染まった白い花のついたリボン。それを見て少女が涙を流す。


「そ、それ、リザお姉ちゃんの、わたしと一緒に買った、お揃いの……」


 少女の泣き声が響き渡る。


「な、なんという事を……」


「そんな、お姉ちゃんが……」


 シスターと庇っていた少年、隠れていた孤児達全員に絶望が走る。


「クックック、大丈夫だよ、いずれお前らもリザお姉ちゃんの所に行くんだから、まぁ、それまでに壊れなければ、だけどな?」


 男が一番前に立ちシスターを守ろうとしていた少年に手を伸ばす。その手が少年を掴もうとして途中で失くなる。


「へ?う、うぐぁぁ!?お、俺の腕が!?」


 一拍の後自身の腕が何者かに切り飛ばされた事に気づく。


「……汚い手でこの子達に触れるな」


 銀の髪をたなびかせ、碧眼を鋭くして睨み付けるハーフエルフが立っていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 銀の髪をたなびかせ、剣を振るったハーフエルフは確かにリザであった。


「何でお前がいる?あの時殺したはずだが?」


 リーダー各らしき人物が訝しそうに眉をひそめる。


「いやーびっくりだよね、まさか飛び降りるとはね」


 険悪な雰囲気に似つかわしくない声と共にクロトが降りてくる。


「いくら風魔法が得意でもエリアフライから飛び降りないで欲しいよ」


「例え死んでも、君が生き返らせてくれるんだろ?」


「いや、そういう問題じゃなくね……」


 生き返れるから大丈夫って、割りと危ない思想だな。


「な、何なんだお前」


 リザさんの発言に苦笑していると、リーダーらしき男が俺を睨む。


「あー、こっちは気にしなくていいよ、それより前見たら?」


 俺が言い終わる前に、リザさんは動き出していた。さすがと言うべきか、駆け出した次の瞬間には一番近くに居た盗賊を切りつけていた。


「ふふふ、この細剣(レイピア)は良く切れる!」


「何であの剣は折れないんだ!?」


 あ、それは俺の仕業です。武器が無いと言うので上げました。レイピアとは刺すことに特化した物であり、本来はその細さ故に切る事は出来ない、が、冗談半分に切る事のできる頑丈なレイピアを作ってみたらご覧の有り様だ。ちなみに素材はミスリルです。


「ふふふ、ふはは!切れる切れるぞ!!」


「リザお姉ちゃんがんばれー!」


 文字通りばったばった斬り倒すリザの姿にドン引きする、もはや狂気すら感じんるんだが。なぜ子供達はそれを見て盛り上がれる?


「くそっ、こうなったら!」


 目の前の現象に首を傾げていると、リーダー各らしき男が俺に近づき。


「動くな!こいつがどうなっても良いのか!?」


 俺の首にナイフを突きつけて叫ぶ男。


「あー、これは人質ってやつか?」


「ああ、その通りだよ!生きていたけりゃおとなしくしてろ」


「な、なんと卑劣な!」


 シスターは慌てふためき、子供達は息を飲むが。


「それで?どうするんだ?」


 リザは笑みを浮かべながら聞く、それは男にかはたまた俺にか。


「へへ、このまま逃げさせてもらうぜ」


「うーん、そうだなぁ、とりあえず不合格かな?」


「あ?お前何言って……」


 すっと首とナイフの隙間に杖を差し込み腕を捻り上げて投げ飛ばす。この間わずか五秒。


「ぐはぁ!い、いったい何が……?」


「あのさぁ、人質とるなら首にナイフをぴったりくっつけないと、なんだったら少し首の皮に食い込ませないとダメだよ?」


「ひぃっ!お、お前本当に何なんだよ!?」


 無邪気な子供の笑顔に悲鳴を上げるなんて、なんて失礼な奴なのだろうか。


「それより後ろ見たら?」


 俺が男を投げたのはリザの目の前、直ぐに男はその事に気づくが。


「ひぃ、ま、待ってく……」


 時既に遅し、振りかぶられたリザの剣が男を切り捨てる。


「……ふぅ、みんな無事か!?」


「リザお姉ちゃん!」


「リザ、貴女こそよく無事で……」


 感動の再会をする傍ら、俺は荷物を漁る。


「ええ、彼のお陰で……」


 その姿を捕らえたリザが眉を寄せながらこちらに声をかける。


「クロト?幾らなんでも物取りは良くないぞ?」


「んー?ねぇリザさんの持ってた剣ってどれ?」


「えっと、いや、ここには無いな」


 リザはぐるりと周りを見ると、首を横に振った。


「えー、無駄足か……」


 俺はここに来る途中、リザの持ってた剣にとても興味を引かれ、見せてもらう事になっていたのだ。あわよくば譲って貰おうとしたが、それは出来そうになかったので泣く泣く諦めた。


「じゃあ、何処に有るのだろうか?」


「こいつらのアジトじゃないか?もしくはまだリッドが持っているか」


 ほう、剣を奪ったのはリッドらしい、実はそいつにも興味がある。


 リザと二人、剣の行方を考察していると、ベルの音が聞こえる。


ジリージリーン


「ん?何の音だ?」


「姫様に渡した札の念話を伝える音だよ」


 懐から一枚の札を出して額に当てる。


「どうしました姫様?元気ですか?」


『ク、クロト君!』


「はい、はい、クロトですよ」


『た、大変です!馬車が賊に囲まれて、今レイラ達が応戦をしているんですが、数が多くて!』


「あちゃー、やっぱり出ましたか」


 賊が居るのは知ってたけど予想より行動が早いなぁ。


『は、はい!どうしたら良いでしょうか!?』 


「どんな賊ですか?」


 場合によっては、急がなくても……。


『そ、それが、白金のリッドもいるみたいです!』


「直ぐに行きます!」


 渡りに船とはこの事か?話してたら向こうから出てきてくれた。


「クロト、わたしも行こう」


「うーん、申し出はありがたいんだけど、またここに闇ギルドの連中が来ないとも限らないし、遠慮しとくよ」


「む?そうか……」


「それにこれ一人用だし」


「一人用?」


 札をひらひらして見せる。


「おっとその前に、シスターここの庭ちょっと使わせてもらえます?馬車停めたいんですけど?」


「え、ええ、構いませんよ」


「ありがとうございまーす、んじゃ、また後で!」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

エリア姫がクロトと話している間、馬車の外ではレイラ達がリッド率いる闇ギルドと対峙していた。


「冒険者リッドだな?この馬車に誰が乗っていられるか、知らないわけではないだろう?」


「ええ、知っていますよ、その方を王都に帰さないようにするのが依頼ですから」


 薄ら笑いを浮かべる青年、それに嫌悪感を出しながらレイラは質問を重ねる。


「その依頼とは誰からのだ?」


「申し訳ありません、守秘義務がありますのでお答えできません」


「……では、質問を変えよう、後ろに居るのはどちら様だ?」


「彼らは僕のパーティーメンバーですよ、ああ、もちろん闇ギルドのね」


「隠さないのだな?」


「ええ、リザに聞いたのは知っていますからね、どういうトリックかは知りませんが、まさかあの状態で生きているとはね、なので残念ながら貴殿方には消えてもらいますよ?」


 微笑みながら後ろの男達に指示を出し馬車取り囲ませるリッド、だがその姿を見てもレイラは表情を崩さない、それ処か何処か呆れるように息を吐く。


「はぁ、そんなにうまくいくだろうか?」


「なに?」


「いや、最近常識を見直す事が多々あってな、捕らわれるのは良くないと、認識を改めたばかりなのだよ」


「何を言っているんです?気でも触れましたか?」


 リッドが怪しげに見る中、馬車から額に何かを当てたエリア姫が出てくる。


「え?えっと、紙をですか?はい、はい、わかりました………こうでしょうか?」


「さっきから何が……」


 起こっているのか、リッドが疑問を持ったのもつかの間、エリア姫が掲げた紙から魔方陣が現れる。


「くっ、魔法か!?全員防御に」


ドォォン!


 リッドの指示もむなしく、エリア姫の前に陣取っていた三人は爆発に巻き込まれる。


「は、はわ、はわ、はわ!?」


 まさか自分の持っていた紙から爆発が起きると思っていなかったエリア姫は大いに慌てる。


「いやー、やっぱり開幕の一発は爆発に限るねぇ」


 声と共に魔方陣からクロトが出てくる。


「な、何だお前は!?」


「盗賊ってのはみんな同じ質問しないと気がすまないのか?俺はただの賢者さ」


「け、賢者?」


 ふむ、こいつがリッドか?ドーピングしてるって言うからもっとゴツいかと思ったら、スマートなイケメンが出てきたな。


「あんたがリッドだな?リザから奪った剣はどうした?」


「……っ、ここにはない、闇ギルドの本部に置いてきた、ギルドマスターが持ってるはずだ」


 おや?ずいぶん素直だな?


「おい!リッド何をぺらぺら喋ってるんだ!」


「よせ、こいつにはいくら束になっても勝てない」


 ほう、曲がりなりにも上位に居ただけはあるな、しっかり力量を見極めるとは。


「はっ、腰抜けが、そこで見てろ」


 そう言って斧を振りかぶる髭を生やした男。……バカは何処にでもいると言うことか、よろしい蹂躙だ。


「一応言っておくが、怨むなよ?」


「このガキが何を言って……」


 言い終わる前に持っていた斧を落とす男、正確には斧を持てなくなった男。


「ひっひいぃ!お、俺の腕が!?」


 肘から先が黒いモヤに包まれ、まるで無くなったようになっている。


「おいおい、腕くらいで騒ぐなよ」


 黒いモヤを出しながら男に近づく。


「ひっ、来るな!来るなぁ!!」


「うるさい奴だな……」


 騒ぐ男の頭に手をかざしモヤを放つ。


「あ、あぁぁ……」


 頭がモヤに包まれ膝から崩れ落ちる。


『う、うわぁぁ!ば、化け物!!』


 とたんに見ていた他の連中は阿鼻叫喚し、逃げ出す。もちろん逃がさないがな。逃げ出した方向にモヤで壁を作る、運悪く止まれずにモヤに突入した奴は走っている途中で崩れ落ち、体が全て消えた。


「ひいぃ!た、助けてぇ!」

 

 その後はゆっくり一人づつ近づきモヤを足や腕に放ち身動きが出来ないようにする。ほとんどの奴は恐怖からか途中で気を失って大人しくなった。


「な、何なんだ、何でこんな事を……」


「いや、ただ単に逃げられたら面倒だし、楽だからだけど?」


 唯一五体満足なリッドに問われ、軽い感じで答える。


「ぼ、僕はこれからどうなるんだ……」


「あんたはお仲間も含めて国で裁かれるよ、良く知らないからどうなるかは解らないけど」


「は、ははは……」


 壊れた?信じられないような物を見ながら乾いた笑いをするリッド。


「お、おい!クロト!幾らなんでもやりすぎだ!」


 そこにレイラさんが鬼の形相で迫って来る。


「平気ですよ、ほら」


 最初に倒れた男を指差す。男を覆っていたモヤが晴れ、そこには外傷の全く無い体があった。


「な、何をしたんだ?」


「別に大した事はしてませんよ?」


 レイラさんに今しがた起きた事を説明する。黒いモヤは闇魔法で作ったただのモヤ、特に効果はない、強いて言うなら見えなくするぐらいだ、そのモヤが覆った部分に感覚が無くなるくらいの麻痺を施し、あたかも無くなったように錯覚させただげ、倒れた奴は顔に強烈な睡眠ガスを吹き付けた。


「つ、つまり誰も死んでいないし、怪我もしていないと?」


「はい、その通りです」


 後から来たエリア姫に問われ、答える。


「で、でも、そんな簡単に?」


「思い込みを激しくさせたんですよ、最初の爆発と、会話で」


 実は出てきた当初から恐怖心を煽る魔法を仕掛けていた、その結果爆発の魔法ですごい力が有ると認識させ、会話の「怨むなよ?」で、何か怨むような事をされる!と恐怖心をさらに煽った。


「結果、腕や足を奪われたと勘違いして気を遣ったのです」


「……なんともえげつないな」


「さすがに姫様の前で賊とはいえ、ぐちゃっとするわけにはいきませんから」


「当然だ!」


 説明を終え、リッドに向き直る。


「さて、ご理解頂けたかな?」


「は、ははは、本当に君は化け物だね」


「お褒めいただき光栄だよ、知りたいことが有るんだが?」


「残念だけど僕は何も話さないよ……」


「ああ、だから、聞きたいことじゃなく、知りたいことだよ?」


 リッドの頭に手を乗せて、リッドを眠らせる。


リッドから情報を抜き出し。目的地が分かったのでとりあえず王都に戻る。


「と、言いたいところなんですが、こいつらどうします?」


 闇ギルドのメンバー、選択肢としてはこのまま放置で魔物のエサか、連れていくか。


「……王都の門前にこいつらを運べるか?」


「はい、できますよ」


「なら、わかる場所に私とこいつらを送ってくれ、衛兵には私が伝えよう」


「わかりました~」


「フィリアその間姫様を頼む」


「畏まりました」


「………」


「どうしたクロト?」


「いえ、レイラさんも慣れてきたなぁと」


「誰のせいだ!」


 怒られた、まぁ、この後の事も決まったし。移動するか。


「じゃあ、シスターとリザさんには話してあるから」


「はい!先生も気をつけて!」


「うーい!」


 姫様を乗せた馬車をリザさんの居る孤児院の庭へ、レイラさんとリッド達を門前に送り、俺はもちろん闇ギルドのアジトへ転移する。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

王都の地下、下水道の横に作られた闇ギルドのアジトでは。


「クックック、冒険者と小娘を殺すだけで、これ程の金が手に入るとはな、加えて教会のシスターも直ぐに頂けるとは、ついてるな……」


「いやー、転移の便利な所ってさ、場所を知ってれば何処にでも行ける事だよね、たとえそれが他人の記憶でもさ?」


 あれ?前に難点って言わなかったっけ?まぁいいか。


「な、何だ貴様!何処から入ってきた!?」


「入って来てないよ?だって下水が臭いじゃん?」


 おっさんを無視して、部屋を物色する。


「おい!勝手に触るな!」


「うーん、おっ!あったあった」


 俺が見つけたのはリザさんの剣、そしてリッドが使っていたドーピング薬。


「ほー、へー……」


 なかなか興味深い二つを手入れご満悦である。


「貴様!」


「うるさい」


 邪魔をするおっさんに軽く爆発を放ち気絶させる。黙ったらそのまま街の門前に転移させる、闇ギルドの黒い証拠つきで。これならレイラさんか通りすがりの誰かが衛兵に突き出すだろう。


「おっと、ドーピング薬の資料については改竄しとかないと……」


 もちろん根こそぎ頂いていくからだ。その後残っていた闇ギルドの連中も同じように出荷して、最後に入り口に仕掛けを施して帰る。後に突然人が門前に倒れているという怪奇現象が街で流行ったのは別の御話し。

こうして闇ギルドは一人の賢者に潰されていった。


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