プロローグ
おまたせしました、ですが、プロローグということで少し短めです
ここは、第三区分街ロックフォード。
海に近しい場所にあり、市場が栄える街なの。
今日も人々は当たり前のように笑い合い、海からとれた幸で賑わせ、仕事に疲れた体を酒や食べ物で潤し、眠っていく。
でも、つい最近まで、この街に笑顔があることはなかったの。
第二区分街ローレルとの貿易停止協定。
ある男、ウィニーが行った、自分一強の環境を守るためだけに置いたルール。
それの影響でロックフォードは衰退し、食べ物に困ることはないけど、街全体が元気を失っていったの。
彼は言う。
「貿易停止協定を撤回してほしくば、この私に勝ってみせなさい」って。
みんな、ウィニーの使うアグロデッキに、そもそも戦いを挑む者はたった一人しかいなかった。
でも、その子はずーっと負け続けた。
負ければコロシアムに強制参加させられている住人から、掛け金を勝手に巻き上げられる。
だから、その子はみんなにずっと嫌われ続けた。
何度も挑んで死なないことも相まって、「化け物だ」とも言われ続けた。
わタしは、気に止めもしなかった。
だってそんなことよりもおばあちゃんを生き返らせたかったんだもん。
だから、いきなり貿易停止協定が撤回されたことは、どの辺から起こったのかはわからない。
ただ、すごいことだとは思った。
生身の人間だったはずのその子が、ようやく目的を成就することが出来たんだ。
わタしは、ふと頭をかすめた。
集めるなら、強い魂がいい。
だから、わタしはその子に近づいた。
嘘までついて、その子の魂を抜き取って人形にするために。
けど、失敗しちゃった。
その子の友達に、あっけなく負けてしまったんだ。
でも、頭まで吹っ飛ばされてバラバラになったわタしは、全然怒りが湧いてくることはなかった。
むしろドキドキして、こんなにも満たされた気持ちになるのは初めてだった。
それだけじゃない。
あんなに酷いことをしたわタしに、また会おうと言ってくれた。
……わタしは、ドレスを脱いでお母さまに作ってもらった服を着こむ。
三人の……いや、ネルお婆ちゃんも合わせて四人のおかげなんだ。
クロエお婆ちゃんが笑ってくれたのも、わタしがこうして友達というものを知ることが出来たのも。
だから、今度は――――。
「お嬢様、よくお似合いですよ?」
「えへへ、ありがとうしつジ!」
「それで、その恰好で今からどちらに向かわれるので?」
その作ってもらった服。
赤茶色のコートに、ディアストーカーハットっていうらしい帽子を斜めに被る。
これで今日からのわタしが、完成。
「決まってるよ?」
「ふむ……では、どこに?」
「もちロん、ネルお婆ちゃんの家があった跡地!」
執事は、わタしの強い眼差しを見ると、ニッコリと笑って言った。
「では、馬車を出しますね……」
ウィズ達は、この街でとんでもない誤解から追い出されてしまった。
わタしだったら、すぐに彼らと合流することもできる。
けど、それだけじゃ何も変わらない。
帰ってきたら、住人達にまた追い出されてしまう。
これは、わタしの恩返し。
――――だから、わタしが友達の誤解を解いてあゲるのっ!
さぁ、はじまりはじまりですよ?
次回に期待です!