あぁ、可愛い
私の彼氏、たくみ君はとても可愛い。でも、何が可愛いって聞かれても答えられない。だって全てが可愛くて好きだから。
私の前で微笑んでいる彼も可愛い。手を繋ごうって言い出せなくて、もじもじしてる姿も可愛い。私から手を繋ごう! って言った時の嬉しそうな顔なんて見た時は特に可愛い。
可愛い彼が大好き。
でも、私が一番好きなのは……そんなのじゃない。そんな普通のたくみ君じゃない。だから今日はそれを見に行こう。
私は知ってる。今日、たくみ君はバイトがある。実はこの情報、彼は隠してるみたいなんだけど、私は知ってるんだよね。私とデートする為にお金を貯めてるんだって事を! 可愛い! 最高!! 本当に何でもしてあげたくなっちゃう。
私はそんな健気なたくみ君も好き。でも? でもでもでも? ここに私が男連れで現れたら? 私の為に頑張ってるのに知らない男と歩いてたら?
あぁぁぁぁぁぁぁァァ!!!!! 想像するだけで脳が溶けちゃいッそうッ!! 怒っちゃう? 泣いちゃう? 絶望しちゃう? 愛想を尽かしちゃう? あぁん、もう!どんな姿も見たくなっちゃうじゃない!!
好き!好き好き好き好き好き……
あっ、イケない! トリップしちゃってるよ、私。そんなんじゃあ目的が達成できないよ……もっと可愛いたくみ君を見たいよね、私? うん!見たいよ、私! それじゃあ……突撃!!
ちなみに隣にいる男は私も誰なのかよく分かってない。ちょっとの間だけ一緒に歩いてね? って言ったら顔をデレデレしながら歩いてくれたよ! ……ぜんっぜん、可愛くないしトキめかないけど。
お前に脈なんてねーよ、バーカ。気持ち悪いし、死ねよ。不快だわ。
……!! たくみ君だ !正面から歩いてくる! ……あ、こっち見た……凄く悲しそうな顔してる!! 可愛いー!!私と横にいる男を順番に見つめてる! ……あ、肩を落として歩いて行っちゃった。
んーもう! 落ち込んでる姿まで可愛いとか反則じゃない! 後でたっぷり甘やかしてあげよーっと。じゃ、用済み男君、バイバイ!
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たくみ君、無理矢理男に付きまとわれてたって説明したら信じてくれたんだけど!? 見た目とか仕草だけじゃなくて中身まで純粋とか、あーもう無理。死んじゃいそう。好き、好き。大好き。たくみ君で良かった……一生一緒に居ようね。約束だよ。
☆sideたくみ☆
僕の彼女、みさきちゃんはとても可愛い。でも、何が可愛いって聞かれても答えられない。だって全てが可愛くて好きだから。
僕の前で微笑んでいる彼女も可愛い。手を繋ごうって言い出せなかった僕の事を気遣って手をつなごうって言ってくれた時に触れた優しさなんてとんでもなかった。天使かと見間違える位には。いや、天使よりも可愛いのかもしれないな。
でも、ある日僕は見てしまった。みさきちゃんが別の男と歩いているのを。
最初は目を疑った。まさか、浮気……?? でも、でもでもでもでもでも!!! 男の顔はどう見ても僕よりもかっこよくない!!彼には彼女の傍に価値はない!あんな奴より絶対に僕の方がいいハズだ!!
おかしいなんでこんなの間違ってるよ信じられない悪い夢なのか信じたくないイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!
でも、疲れてしまった僕は一旦家に帰ることにしたんだ。そしたらね! やっぱり彼女は僕を裏切ってなんかなかったんだ!! ごめんよ、みさきちゃん。疑ってしまって。
お詫びに……そうだね。そうしようか。
『ボキッ! バキッ!グチャグチャ!! ボゴッ! ボゴボゴッ!』
死ね! 死ねよ! グチャグチャにしてやる!! 僕に彼女を疑わせた罪は重い!!死ね!死んで詫びろ!!
僕は最早原型の分からなくなってきた物を殴り続ける。いや、者か。まぁ、そんな事はどうだっていい。
彼は、彼女に付き纏っていたクソ野郎だ。コイツはまた彼女に会えるんじゃないかと期待して、前あった場所でウロウロしてやがったんだ。
あぁ、これで彼女がもう付き纏われることは無い。早く可愛い彼女に会いに行こう。彼女は僕が守り続ける。