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「何よ?もったいぶって。何が言いたいのかしら?」
いえ、まあ。
少し気になったもので。
眼鏡が記憶しているニイヤマ課長(あぁ、ニイヤマ課長だ。いま名前思い出しました。)は部下の仕事に対して叱責はしても、自分の仕事に対しては決して不満を言わない。
自分の弱みを部下に見せない。
なんとなく。
そういう人であったような、そんなおぼろげな記憶があるんですが。
まして出向先で得た情報を、誰が聴いているかもわからない公の場で。
感情のままに大声で、喚き散らすような方ではなかった。
何か、必要以上に感情的に。
なっているのを装っている。
眼鏡にはそう見えるのですが。
「な、何よ…?ずいぶんよく覚えているじゃない…?そりゃ…その、私だって、たまには愚痴りたくなるときくらい…。」
向かいの方は途切れがちに、しばらく言い訳していましたが。
「敵わないわね。」
一言いうと、諦めたようにため息をつきます。




