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「ちょっと!!聴いてるの?ねえ!!」
『聴いてるの?ねえ!!』がきましたね、そろそろパワー切れでしょう。
もちろん聴いてはいなかったのですが。
話を進めることができそうで、眼鏡は少々安心します。
早く帰りたいんです、明日も仕事なので。
「何よ…迷惑そうな顔して…私だって…そりゃあ、仕事中に会社のメッセージツールを使って、プライベートな連絡をつけたのは悪かったわよ…急に呼び出したのも…でも…。」
なんでしょう。
少しばかり風向きが変わって、この場の空気が気まずくなります。
「…ちょっとだけ、楽しみだったの…あなたがどんな顔して会いにくるかなって…。」
向かいの方の眼鏡の奥に、光る滴が僅かに見えます。
困りました。
どうにか話を繋げなくては、眼鏡は帰れそうにありません。
課長でも泣くことがあるんですね。
話を変えようと出した一言。
向かいの方が驚いた顔で、眼鏡の顔を見上げています。




