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「…で、そっちの彼も催眠術にかかっていないようだが?」
大柄な影が視線で示す、闇のフロアの奥の奥。
さらに奥。
宇宙時代にそぐわない、チョンマゲあたまにサンバの腰簑、スパンコール輝くブラジャー。
変な衣装に身を包んだ変な男が、漢字の書き取りの宿題をしている。
変な男である。
「ハー!」
視線に気づいた変な男が、闇の中から奇声をあげる。
「つまみ出せ。」
小太りの影が手元のボタンをポッチと押す。
「ハー!」
変な男は変な悲鳴をあげながら、床に開いた穴に吸い込まれていく。
「…なんにせよ、エネルギー供給システムの構築が最優先、と。やはり『教授』の協力は必要不可欠のようですな。」
大柄な影が穏やかな声で、確かめるように小太りに呟く。
「じゃあ本日の会議では、『教授』をお迎えにいくことをこいつらに決定させる方向で。」
小太りの影は小太りの声で、確かめるように大柄に呟く。
鎧の男は動かない。




