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「たいしたものだね、君の催眠術というやつは。」
大柄な影がため息まじりに。
諦めたようにフッと呟く。
「あぁ、一回かかっちゃうとねえ。かかり癖って言うか。同じ状況、同じ条件なら一瞬でかかるようになっちゃうんだよねえ。この定例会議なんかいつも変わり映えしないから、絶好のシュチュエイションなんだよねえ。」
小太りの影が自慢げに。
小太りの身体を揺すって応える。
「…で、そっちの彼は催眠術にかかっていないようだが?」
大柄な影が視線で示す、闇のフロアの奥の奥。
宇宙時代にそぐわない、置物のような全身鎧。
時代がかった西洋甲冑に身を包んだ男が、静かに虚空を睨んでいる。
先ほどまでの二人の話を聴いていたのかいないのか。
彼がそれに対してどのような感想を抱いているのか、兜の下の表情は読めない。
「ナイトインアーマー君は大丈夫でしょ。いままで僕たちの邪魔とかしたことないしねえ。」
鎧の男は答えない。




