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「そっちねえ。一応ピコンピコーン病の予防接種ってことで、各国で一般市民の皆さんに対するバリトンニュームの注入を進めてるから、今年中には六割方の人間がピコンピコーン光るようになると思うんだけどねえ。」
小太りの影がたぷたぷたぷと、顎打つ肉のリズムに合わせて。
まるで唄でも朗するように、一言一言はっきり喋る。
「地上のバリトンニューム人間から宇宙ステーションのバリトンニューム動力機関へエネルギーを伝達するシステムの構築の方は?『入れ物』と『動力』は我々、僅か14人で全宇宙を支配するという宇宙海賊組織、通称『フォーティーン』の力をもってすれば、そもそも用意するのはさして難しいことではないはずですが。」
大柄な影は穏やかな声で。
しかし妥協はしないという意思のこもった、強い調子で小太りを責める。
この二人。
もはや会議のルールも〈当番〉の男の進行も無視し、二人だけで話しているように見えるが。




