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「はあ。彼が唯一の成功例…唯一の成功例だったはずなのにねえ。まさかねえ、よりにもよって例の彼らの中に、二人めが出てきちゃうなんてねえ。」
小太りの男は悔しげに、たぷたぷたぷと顎肉を揺らす。
「それは間違いないのですかな?」
若干の興味を惹いたのか。
大柄な男の穏やかな声は、小太りの声に続きを促す。
「…大分前から一酸化バリトンニューム中毒症に感染してるらしいことは判明してたんだけどねえ。まあ、どのルートでそんな、普通に生活してたら絶対に摂取しないレベルの量を体内に貯めこんだのか、さっぱりわからないんだけど。例の彼らはお馬鹿だからねえ、インスタントコーヒーと間違えて毎朝飲んでたんじゃないのかねえ。」
いったいどこまでが冗談であるのか。
この一見滑稽な小太りの男、それ故に、真意の読めない時がある。
大柄な男も困惑したのか、はは、そんな、まさか…とでも言いたげな。
乾いた笑いで言葉を濁す。