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暗黒の宇宙空間。
遥か地球を見下ろす静止軌道上に浮かぶ、六角形の宇宙ステーション。
人呼んで『スペースペンタゴン』その内部、最上層のVIPルームから伸びる廊下を、大柄な男と小太りの男。
二人の男が進んでいる。
「…例のベンダー…君?やられてしまったようだね。安定供給どころか補充予定の半分も満たさないまま、アイスクリームごと灰になってしまったようだが。」
大柄な男が穏やかな声で、小太りの男へ声をかける。
「あぁ、彼ねえ。うん。まあ、死んでないと思うけどねえ。もともとのサイボーグ手術に加え、一酸化バリトンニューム情報素によって脳のシナップスが超人的に活性化、超反応力と超集中力、超感覚を手に入れた唯一の成功例だよ彼は。そのかわり、ちょっと頭がおかしくなっちゃったけど。」
小太りの男は小太りの声で、大柄な男の言葉に応える。
暗い廊下に静かな足音。
顎の下でたぷたぷたぷと、余った肉が音を立てる。