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それと、もう1つ。
狙った獲物は絶対に逃さないって有名なんだそうだ。
誰が呼称んだか、『ターゲット』。
俺の仇名。
それが由来だ。
甲鵡。
カウンターに。
グラスを置く音、高く響く。
再び訪れた沈黙の時。
夜の酒場は時間を歪め、遅め、留め、また流す。
隔絶された四次元空間。
上げた目線。
先刻から唯だ見つめる空に、一体なにが視えると言うのか。
或いは空に、未来があるのか。
対話の相手は隣席で継ぎの言葉を待っている。
対話の停滞まったまま。
席を立つ。
一度も顔を視ずに酒場を出る。
そう。
これは数字の問題じゃない。
矜持の問題だ。
「本当、いい男ね。」
背後に美女の呟きが聴こえた。




