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暗黒の宇宙空間。
遥か地球を見下ろす静止軌道上に浮かぶ、六角形の宇宙ステーション。
人呼んで『スペースペンタゴン』その内部、最上層のVIPルームへと繋がる長い廊下。
意図的なものか、はたまた単に無精なだけか。
常に薄暗い照明は、一直線に伸びる廊下の端から端まで見渡すことを許さず。
どことなく。
背徳的な秘密がこの先、待ち受けていると想起させる。
その、長い廊下を小太りの男と。
大柄な男が並んで歩く。
横並びではない。
小太りの男が前をゆき、大柄な男が後ろを歩く。
それはこの二人の関係が、肩を並べるほど親しくはなく。
否。
むしろ肩を並べるほど親しくはないと、周りにアピールする意図で。
そのように歩いているようにも見える。
小太りの男は困ったねえ。
困ったねえと、呟き歩く。
大柄な男は困りましたなあ。
困りましたなあと、応えて歩く。
小太りの足音と大柄な足音。
二つの足音が薄闇に響く。