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徒に。
沈黙の時間が流れる。
今夜の琥珀は邪垂と辛い。
その感想は何度目だろうか。
「冷たいのね。」
永き時はゆっくりと往き過ぎ。
観念したように先に口を開いたのは美女の方。
応答えの替わりにグラスを呷る。
高矛。
カウンターに降ろしたグラス。
音、硬く響く。
あんた。
俺を利用したな。
視線を遣けないまま言葉を落とす。
「いけなかったかしら?」
視界の端。
僅かに視える頬の稜線。
それだけで。
対手が悪気なく微笑んでいることが把握る。
「報酬は十二分に与るわ。『私の』依頼人からね。元来、今日は貴方とその商談をしに来たのだけれど。」
隣で肩の動く気配。
悩ましげに。
首を傾げているのだろう。




