749/1502
7 - 101
まったく気が進みませんが。
時刻は未だ10時半過ぎ。
定時にはまだ程遠く。
眼鏡は嫌でも扉を開けて、職場に戻らねばなりません。
覗き窓が粉々に割れて、ギザギザのガラスが牙を剥きます。
たかがガラスの一枚が。
割れただけで、どうしてこうも。
先ほどまで明確にドアであったものが、なにかわからないモノになってしまうのでしょう。
眼鏡は眼鏡をクイッとやります。
既にドアではない何かを開けて、一歩踏み込めば、あぁ。
整然と並んでいたはずのデスクの列がひっくり返り、PCが黒い煙を吹き上げ、取るもののいない電話はリンリン鳴り続け、上空を椅子が飛び交います。
想像した以上の地獄絵図。
そして眼鏡の部署の眼鏡たちは、ピコンピコーン!ピコンピコーン!と意味不明な奇声をあげつつ、そこやかしこで殴り合う。
その様、まるでラジオコントロールの切れたロボットの如し。
これは一体、何がどうしたことでしょう。