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「振り子催眠に叩音催眠。もっと確実な方法はいくらでもあるだろうに…まあ、結果的には今回も、君の思い通りに進んだようだがね。」
小太りの男と痩せた男、歩み行く二人の背後から。
穏やかな声が話しかけ、小太りはギクリと立ち止まる。
「私だよ、コテプン看守長。物騒なものはしまってくれたまえ。」
落ち着き払った穏やかな声。
大柄な身体から右手が伸び、照れ臭そうに左右に揺れる。
その掌の甲に、斑のように。
大きく目立つ古傷ひとつ。
「…なんだ、湯川専務サンだったんだねえ、びっくりして損しちゃったんだよねえ。」
大柄な男を視認して、安心したのか小太りは。
懐に入れた右手に握る、「物騒なもの」からその指を離す。
「トランプ計画。軌道の修正が必要になるとは思ってはいたが…彼が?かね。」
大柄な男はあくまで声は穏やかなままに、痩せた男へ視線を投げる。
聴いているのかいないのか。
痩せた男はふらふら揺れる。