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「そのことについてなんだけどねえ。」
ざわめく暗闇、各々が。
議論百出、雑音の中。
まるでその場を統べるように、小太りの声が私見を発す。
余った顎肉の揺れる独特のリズム。
たぷたぷたぷと刻むリズムが。
妙に耳の奥底に残り、皆の視線が一つに集まる。
自然と室内はシンと静まる。
「いやねえ、さっき。囚人どもの食後のデザートに、食べさせてみたって言ったじゃないですか。一酸化バリトンニューム。最初はねえ、アイスクリームに混ぜて食べさせてたんだけどねえ。ある程度その、症状が。一酸化バリトンニューム中毒の。ピコーンピコーンで言うこときくようになるくらい症状が進むとねえ。なんか、なんの疑問も持たずに、むしろ積極的に食べるようになるんだよね、一酸化バリトンニューム。今はもうねえ、フツーにピコーンピコーン光ってるままのやつを食べさせてるんだけど。食べますよ、普通に。」
顎肉の合いの手、たぷたぷと鳴る。