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「軍刑務所ねえ、あんまり予算もないからねえ。看守くんたちが例の、一酸化バリトンニューム中毒症…感染しちゃって。みんなしてピコーンピコーン言ってたから、もうなんか、治療とか面倒くさくてねえ。せっかくだし試しに毎日、投与してみたんだよねえ、看守くんたちと、ついでに囚人どもにも、一酸化バリトンニューム。食後のデザートにねえ。」
小太りの声が、だらだらだらと。
近況について説明を連ねる。
下顎の肉が、たぷたぷたぷと。
声にあわせて怪音を立てる。
ざわ、ざわと室内にざわめき。
あたかも世間話でもするかのように述べてはいるが。
当然ながらこれは倫理的、人道的に大きく社会通念を外れた行為である。
「それで1ヶ月くらい?経ったんだけど。看守くんがピコーンピコーン言うだけで、囚人どもに指示が伝わるようになっちゃったんだよねえ。」
「ほう…?」
小太りの危険な述懐に。
穏やかな声が反応を示す。