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「おっと…これは失礼。」
円卓の一角、闇の中より。
穏やかな声が照れ臭そうに、発言のために右手を挙げる。
その掌の甲に、斑のように。
大きく目立つ古傷ひとつ。
「…発言どうぞ。」
しぶしぶ、といった様子を声色に乗せ、<当番>の男が発言を許可する。
「軍刑務所のほうで試験的運用をされている…とのことでしたが。なんでしょう、新しい監視ロボットでも導入されたのですかな?」
穏やかな声はあくまで穏やかな声だが。
どこかその穏やかさの裏に、相手の出方を窺うような。
抜け目のない、懐疑的な色を匂わせている。
「あぁ、ロボット看守?うーん、そうすればよかったかもしれないねえ。うん。それも面白かったかもしれないねえ。」
円卓の一角、闇の中より。
小太りの声がたぷたぷと答える。
小太りの声はあくまで小太りの声だが。
どこかその小太りの裏に、相手をせせら笑うかのような。
微妙にムカつく含みを持たせる。