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きらきらと。
素直に輝く二つの眼。
おかしな男の引く荷車の。
チリチリと鳴る赤錆びた鈴。
色の褪せたゴチック体の、抜き文字で書かれた「アイスクリーム」。
風にはたはた靡くノボリも。
宇宙時代の現代っ子。
坊やの瞳に物珍しく。
きらきらと。
素直に眼を輝かせ。
時代おくれの荷車を引く。
おかしな男を追いかけていく。
「しょうがないなあ…すいません。」
少し遅れて坊やのパパが。
坊やを追いかけやってくる。
荷車を引くおかしな男を。
好奇の目で見る坊やの非礼。
軽い会釈で詫びを伝える。
「母さんには内緒だぞ?」
アイスクリームを買い与えねば。
坊やが彼から離れぬと踏んだか。
覚束ぬ脚で荷車を引く。
男への軽い同情心か。
パパは男に二人分。
彼らの分のアイスクリーム。
小銭を手渡し所望する。
おあ、りがとう、ござーい。
唄うように。
はたまた演劇の台詞のように。
おかしな節で男は喋る。