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「うんうん、そうだったねえ。発言は挙手してからだよねえ。ごめんねえ、ごめんねえ。」
闇の中。
小太りの声が謝意を伝える。
顎の下の余った肉が、たぷたぷたぷと音を立てる。
「…発言どうぞ。」
闇から突き出た色白い右手。
視認した<当番>の男が、苦々しげに許可を出す。
カッ、と闇を払う条光。
ごめんねえ、ごめんねえと謝り続ける、小太りの姿にスポットが当たる。
「…そのことなんだけどねえ。先日の騒ぎのときに、ぼくの部下が現地でこんなものを回収したんだよねえ。」
小太りが。
その小太りの身体に反して繊細な指先に摘まんだ、古いデザインの携帯電話。
ぷらぷらぷらと空中に揺れる。
たぷたぷたぷと頬肉が揺れる。
「そんな!!?」
円卓の一角。
闇の中から青ざめた、素頓狂な驚嘆の声。
ざわ、ざわ、ざわとざわめく室内。
その内訳は驚きが半分。
状況を把握できずに困惑が半分といったところか。