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一歩、二歩、三、四歩。
止まらない男。
ノンストップ・ラヴェンダーが、一歩一歩を踏みしめるようにXカーへの距離を詰める。
彼の脳裏に浮かぶのは。
話数にして100と90回。
リアルな時間で半年以上。
否。
「方向の変わった」後の世界を幾度も幾度も繰り返し生きる、彼にとっては数十年もの体感時間か。
それほどの。
永きに渡る、おかしなロボットと過ごしてきた日々。
彼の作った、彼の自慢の、Xカーとの思い出の日々。
1ツ1ツの部品を組み上げ、ああでもない、こうでもないと、首を捻って過ごしたあの日。
簡易一酸化バリトンニューム機関が完成し、初めてXカーが動いたあの日。
家鴨の雛のように彼を慕い、くっついて歩いたXカー、朝の散歩の大騒動。
夜に降る雨に彼は濡れ、その表情は読めないが。
止まらない男。
ノンストップ・ラヴェンダーの全身が、憂いという字を纏いながら。
一歩、一歩と前進していく。