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シトシトと。
夜の都会に雨が降る。
今は動かぬモノたちの。
硬いからだを泪が濡らす。
宇宙時代に忘れ去られた、旧い世界の然の路地。
その奥の、奥また奥の、突き当たり。
明らかに異質な謎のロボット。
あくまで景色に溶け込まない、取り残されたひとりのロボット。
スペースロボット・Xカーは、今はひとり、雨に佇む。
雨粒に煙る機械のからだ。
ボンワリと。
蒼白い光が迷い子を包む。
ブリリリリリ…。
いつになく。
控えめに響くオバマのエンジン。
じわり、じわりと縮めるように、路地の奥へとオバマが進む。
ワイン、ワインと動くワイパー。
夜の舞台のメトロ・ノーム。
演じらるるは喜劇か悲劇か。
最後の場面が幕開く。
「送ってくれてありがと。マシーンマンさん、ちょっと待っててね。すぐ済むから。」
黒のオバマのドアがあき。
止まらない男。
ノンストップ・ラヴェンダーがオバマを降りる。