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月の明から炎の朱へ。
ふわり舞い降る黒い人影。
都会の空に羽根が舞う。
軽い跳躍きと裏腹に。
ガシャリと重い金属の、擦れ触れ合う着地音。
「無用心だな。後ろにも眼を付けろ。」
人工の。
光輝く未来都市。
その街並みにそぐわない、時代遅れの全身鎧。
夜の都会に降り立った、甲冑の男が重い声。
兜に籠った低音で語る。
「そうか。」
聴いているのか気にしてないのか。
筋肉男は振り向かず、悠然と脚を前に進める。
「抹殺シマス。」
「抹殺シマス。」
夜の都会に機械音声。
掃除機、選択乾燥機、便器にアイロン、ペンギン、パトリ。
それぞれの駆動、排出音が。
意味あるひとつの言葉を発する。
人類の便利に創られたそれらが。
人類に殺意の牙を剥く。
「…来るぞ。」
「そうか。」
超人二人は言葉少なに。
人類の敵を迎え撃つ。