57/1502
2 - 10
「社長が問題としているのは、ね。」
美女が念を押すよう間を持たせる。
「チンピラさんたちの中に1人、やたらと社長のコレクションのオバマに拘った男がいたらしいの。オバマを持っていくかいかないかないかで、社長の前で2時間近く仲間と押し問答していたらしいわ。その間、社長はぼんやり昨日のランチに何を食べたか考えていたそうだけど。結局、オバマは強奪れてしまった。」
2010年代最高の名車、走る芸術と言われたあのオバマか。
そいつはなかなか、物の価値のわかる男がいたようだな。
今度は此方が肩を竦める。
「世界に数台しか現存しないクラシック・カー。しかも完動品ときては値段以上の価値があるわ。実質、プライスレスとすら言えるかも…。社長はどうあっても、そのオバマだけは取り返したいらしいの。」
脚を止める。
目的の機械駐車場だ。




