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「謙虚なことに、彼らは社長宅の1番小さい金庫にあった現金の30億だけ奪っていったらしいわ。計画性もなにもない、行き当たりばったりの犯行。そのくせ、逃げるのだけはやたら手際が良かったらしいけど。本職の犯行ではないわね。まあ、調子に乗ったチンピラ崩れ、ってところかしら…どうかした?」
ああ、すまん。
知り合いに「計画性もなにもない行き当たりばったりの調子に乗ったチンピラ崩れ」がいるモンでな。
そいつをつい、思い出して。
不快になった。
しかめた顔を笑顔で崩す。
「社長にとっては30億の現金くらい、どうという事はないわ。深夜にコンビニにアイスでも買いに行きたくなった時のために置いておいた、お小遣い程度のお金だもの。」
クライスラー社社長が、深夜にコンビニにアイス買いに行きたくなるかは知らないけど。
そう言って美女は肩を竦める。




