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「助かるわ。」
後方を歩く美女が云う。
そう。
効率的な時間の利用。
職人同士、仕事の話は。
移動しながらするものだ。
殊更に。
表沙汰には出来ない狙撃手稼業。
依頼人にもそれなりの、他人に聴かれたくない事情。
大なり小なり有るのが常。
機械駐車場への道すがら、効率的に話を進める。
「先日。クライスラー社社長邸宅が不逞の輩に襲撃されたニュースはご存知かしら。」
美女にももう、無駄はない。
核心からズバリ、話が始まる。
あぁ、よく知っているぜ。
困った連中だな。
振り返らずに応えるが。
つい口が弛み軽口を叩く。
いかんな。
今は仕事モード。
ここは気を絞め、普段の通り。
クールな容貌を造作らなくては。




