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残念ながら。
俺の方針でね。
私的な時間の内は、仕事の話は聴こえないんだ。
大袈裟に肩を竦め、お道化て魅せるが。
目の前に。
実と見詰める、水着と見紛う薄着の美女。
一途な目差しの真剣さ。
…ま。
たまには方針を曲げて。
臨機応変に顧客の需要に応えるってのも、また。
職人の仕事の1つの在り方。
OK、OK。
敵わねえな。
今度は此方が溜め息を吐く。
出よう。
席を立つ。
酒場は仕事の話をする場所じゃない。
燻る紫煙。
空気を揺らすスロー・ジャズの奏べ。
平穏とは程遠い稼業を営む男が、ほんの僅かの安息の一時を楽しむ空間。
カウンターの上に代金を置き、暫しの別離れ。
俺は再び戦場へ帰還る。




