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そう。
磨きぬかれた人間の技術は、時に芸術の輝きを魅せる。
お見事…だが。
手元の蝋燭小皿を背後に砲る。
スコン。
背中越しの硬質な音。
遊戯台中央、9の撞球。
静かに奈落へ堕ちてゆく。
入れ替わり。
中央に残った蝋燭小皿。
ゆらりと揺れて、儚と灯る。
長距離からの一点狙撃。
それが狙撃手、この俺の美学。
乱射で一石二鳥、三鳥。
確かにお見事…だが、俺の好みではない。
ワンショット・ワンキル。
呟くのは何時もの決め台詞。
素、と差し出されるカクテル。
店主の一分の無駄もない動き。
至極当然、自然の小粋な計らい。
美女がグラスを上げる。
グラスを合わせ、それに応える。
乾杯。




