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月明かり。
夜空にまんまるおッ月さん。
宵闇のカーテン、灰色の路面。
大きいの、ちいさいの。
でこぼこ伸びる不揃い5つのシルエット。
5人の視線の集まる先に、静かに佇む大きなお屋敷。
嵐の前の静けさに。
安心しきって、丸まって眠る動物のよう。
夜の息吹きだけコウコウ響く。
凛と静かな、夏の宵。
「ヒュゥ。さすがにスゲエ家に住んでやがるな。」
ライフルを構えた長髪のハンサム。
スナイパースコープを覗きながら嬉しげに笑う。
「なんたって業界最大手。やり手で有名なクライスラー社社長の邸宅ですからね。」
遠隔操作のエンジニア。
眼鏡をクイッとやった手が、タッ、タッ、タッ、と画面をタップ。
四角いサイボーグが首をゆっくり回す。
飯はしっかり食ってきたかい。
丸いロボットが首をグルグルと回す。
お前は何をしているんだい。
ああ。
良かった。
「今夜」がまだ、始まってねぇ。




