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「筋肉の収縮と脊髄反射を利用し、無理矢理所定の動作をさせる薬剤を着弾と同時に体内に注入する特殊弾丸。共和国軍の諜報部が開発したものらしいんだけどねえ、まず…こういう使い方しか思いつかないよねえ?怖いねえ、怖いねえ。」
怖いねえ、怖いねえと。
珍し気に掌の中の特製拳銃を眺め回す小太り。
足元では涙と汗と鼻水にまみれ。
自慢の口髭をぐちゃぐちゃにした、口髭男が嗚咽を漏らす。
彼の意思に関わらず、左手は操られたように特定の文字。
クロコップ共和国軍少将クチヒゲーオ将軍。
書き慣れた自著を筆記していく。
「なんだいメソメソして。あんたにはせめて最期まで、高潔なクロコップ共和国軍人として毅然とした態度を崩さずいて欲しかったんだけどねえ。残念だねえ、残念だねえ。」
拾い上げた遺書を確認しつつ。
ぱん。
小太りは一瞥もくれずに最後の引き金を引く。