277/1502
4 - 62
謎のロボット。
マシーンマンは体側面に生えているタイヤを、ウィンウィンと回転させ。
実に器用にボックス席に上る。
どこにも脚の見当たらない彼がはたして、座らずに立っていると疲れるのかどうか。
偉い人にはそこがわからんのであるが。
とにかく彼は当然のように座席に座り、何事もなかったかのように電車に揺られる。
「あなたもヨクフカ港にいくのかしら?」
謎のロボットに興味を持ったのか。
向かいの席の女性がしきりに声をかけてくるが。
聴こえているのかいないのか。
謎のロボット。
マシーンマンはまた何かを受信し、ピコピコピポンと光るのみである。
「え、まもなくハヤカワキヤノン。ハヤカワーキヤノン。電車が遅れましたことをお詫び申し上げます。」
車内アナウンスは相変わらずの口調でのんびりと伝える。
「クールなロボットさんね。」
若い女性は熱のこもった潤んだ瞳で。
向かいの座席のロボットを見つめた。




