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ありがとう
ひらがな5文字のタイトル。
本文はなく、たったそれだけ。
差出人のアカウントは。
既に削除されてunknownとなっています。
ああ、そういえば。
懲罰人事で地方の子会社に異動になると。
そんな話を聴いた気もします。
もう会うこともないのでしょう。
眼鏡は眼鏡をクイッとやります。
さて。
底までスクロールしたメッセージの群れを。
天井までスクロールし直す無意味な作業。
画面を次々流れる数字、メッセージの着信時刻が。
過去から現在まで、足早に時を進めます。
ごく普通のサラリーマン眼鏡の感情なぞ気にもせず。
切なくなっている暇など与えず。
非情に時間は進みます。
最新のメッセージでは新しい課長が。
さっそく眼鏡を叱責していることでしょう。
なに一つ変わりのない眼鏡の日常。
また今日も。
電話とって、PC打って。
悪いと思っていないのに謝って。
眼鏡の日常が始まります。




