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「おー、眼鏡くん。まいど。お疲れ!」
「…ったく、遅刻せえぞ!」
馬鹿の方と、長髪の方の。
無職二人が手を挙げて眼鏡を迎えます。
眼鏡も右手を挙げて応えますが。
しかし。
改めて見回してみますとこの工場。
自動組み立てシステムの遠隔操作系から、製造ラインのレイアウトに至るまで。
マルっと我が社の丸パクり。
いかにも合理性を旨とするオイストリッヒ社らしいと言えばらしいですが。
まったく。
製造業としての矜持というか。
プライドみたいなものはないのでしょうか。
眼鏡は眼鏡をクイッとやります。
…なんですか、その顔は。
無職の二人は面白そうに。
しきりにニヤニヤしています。
「…『我が社』、ねえ?」
「さっすが優秀なサラリーマン!愛社心がお高いことですなあ!!」
はあ。
ただの言い間違いですが?
なんですか。
やめてくれませんか。
ほら、帰りますよ。
眼鏡は二人を急かします。




