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微笑む課長。
いつもプリプリ怒ってばかりの、ニイヤマ課長が初めて見せる。
少女のような微笑みです。
「…あなたはいったい、何になら情熱を持ってくれるのかしら?」
眼鏡の奥の潤んだ瞳。
眼鏡と眼鏡は見つめあい、もう一言、二言三言。
言葉を交わしていましたが。
その言葉は、有線放送のありふれた艶歌。
店の親爺のヘイラッシャイ。
喧騒に溶け、消えていきます。
ン泣いてぇ、くれぇるぅなぁ愛しき人ぉよぉ
(ああんあ)
酒のぉ、熱さぁにぃ忘れてしぃまぁえぇ
(ああんあ)
生きるぅ、旅路ぃはぁ努力ぅ道ぃい
一歩、一歩ぉがぁ大事じゃなぁいぃかぁあ
あぁあー、人生のぉ、この辛さぁあー
まだまだ、酒のぉがぁ、辛いじゃないぃかぁあー
あぁあー、今夜ぁもぉ、また飲ぉんでぇー
眠ってぇ、起きれぇばぁ、朝がぁ来ぅるうー
眠ってぇ、起きれぇばぁ、明日がぁ来ぅるうー