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明るすぎず、暗すぎず。
どっち付かずの微妙な照明。
一見和風の木造を装っていますが、よくみればそれとわかる合成プリントの木目の柱。
ありふれた。
全国チェーンのチープな居酒屋に。
眼鏡と眼鏡の一人がふたり。
どういうわけか、差し向かいで座っています。
流れるメロディーはよくある艶歌。
歌手の方がこぶしをまわし、店のおやじがヘイラッシャイと合いの手を入れます。
「あなた…ねぇ…。」
心なしか。
落ち着かない様子のニイヤマ課長。
いつもの罵倒にも勢いがありません。
「(女性を飲みに誘っておいて、これ!?もうちょっとこう、お洒落な隠れ家的なBARとか?こういう時のために用意しておきなさいよ、成人男性なら!!)」
一応、周りに配慮しておられるのか。
小声でこそこそと、眼鏡が眼鏡に文句を言います。
安いんですよ。
僕の調べによると。
このエリアの最安値です。
眼鏡は眼鏡をクイッとやります。