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「しかし!!」
妙齢の女性が、悲鳴に近い金切り声を上げます。
「しかし…なんだね?君はとにかく、そうやってすぐ他人の意見に否定から入ろうとする。悪い癖ではないか?まず、素直に聞く耳を持ちなさい。今回の決定は例の件だけではない、君の常日頃のそういった振る舞いも考慮に入っているという自覚を持ちたまえ。」
大柄な男性の声は相変わらず穏やかながら。
有無を言わせぬ圧力があります。
ふむ。
なかなか良いことを言う方ですね。
眼鏡は男性の方を支持します。
はやくそこを空けてください。
「失礼。」
大柄な男性が懐から携帯電話を取り出し、や、どうもどうもなどと話し始めます。
携帯電話を持つ掌の甲に、斑のように目立つ大きな古傷ひとつ。
大柄な男性はそのまま、エレベーターに向かって歩いていってしまいました。
実に鮮やかな逃げっぷりです。
後に残された眼鏡がふたり。
気まずい空気が漂います。