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round - 107
「あ、あ、あ。アイス、クリーィムウ。」
「!?べ、ベンダーくん…!?」
めきめきと。
頭蓋軋ます握力のなか、大きな左掌包む頭の狭い視界が捉えた声は、思った相手と違う声。
「あは。うううれしいよぉお。やっとソニックうくぅんになれえたあ。」
「よお。久しぶりだなあ部隊長。まだくたばってなかったか小デブ。相変わらずこすっからいな。」
「部隊長どのお。私の家族に対する保障わあ、約束わあ守ってもらえてますよね、部隊長どのお!!」
「部隊長殿!自分は祖国のため共和国のため、今後とも身を捨て戦う所存であります!!」
背後から。
聴こえた声は調子のくるったラジオのように雑音交じりの多重音声、亡きものたちの混声合唱。
青白く。
輝く鉱物、一酸化バリトンニュームに遺されて。
共有された怨嗟、忠誠、宿望、願望、人さまざまな記憶人格。
「ひぃ…!?」
既に終わった過去からの、理屈ではない本物の恐怖。




