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もったりと。
立ち籠める雲の様に燻ゆる紫煙。
押しては引き、引いては返す漣波は、空気を揺らすスロー・ジャズの奏べ。
時折響く撞球の、コン、カン、と硬質な音。
23時のプールバー。
カウンターに独り、グラスを揺らす。
戦場より帰還した、平穏とは程遠い男の。
ごく短い、平穏のひととき。
世界は相変わらずに、第八次宇宙大戦の勃発するようなこともなく。
退屈で怠惰な、表面上の平和を保ち続けている。
「この平穏な日々のあるのも、俺様の果てしない世界平和への尽力の賜物ですからね?感謝したまえぼくのキミタチ。」
あの馬鹿は。
数日前に何処からともなく「戻ってきた」際に、例によって意味のわからないそんな戯言をほざいていたが。
俺としては。
何故あの馬鹿が普通に当たり前の様な面をしてこの俺の部屋に帰ってくるのか。
そちらの方が、世界の行く末なぞより余程問題に思える。