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「ハー!ボスドコイク?ハー!」
変な男が。
うすらとんかちな奇声を発する。
相手にせずに、どたどたどたと前を走る肉塊。
ふうは、ふうはと荒い息。
「じょっ、冗談じゃない!あんな非常識な連中に構っていられるか!!」
重い身体を必死に揺すり。
ひたすら進むその歩は鈍く。
普通に歩いている変な男が、普通に歩いてついていっている。
変な男である。
「ハーボスファイト!ボスガンバ!!」
変な男は一生懸命、太った男を励ましている。意外と優しいのかもしれない。変な男である。
「(案外。堪え性がなかったわね…。)」
頑張っている二人を、美女は後ろから冷ややかな目で見ている。
「(アレだけは、アレだけは持っていかねば!)」
一変した薔薇園の中を横切り、太った男はガレージを目指す。
常人であれば3分とかからない距離であるが。
悲しいかな。
太った男の鈍重な肉体には、無限とすら思える道のりである。